「お昼一緒できます?」


午前中の終わりから始めた作業にキリがついたのは一応定められている昼休みが残りわずかになったところで、昼食を済ませた同僚たちがぽつぽつとフロアに戻ってきていた。そんな中背後から声をかけてきたのはいつもの後輩だった。
仕事鞄であるごついリュックサックを背負ったバーベリーは「今日これであがりなんすよ。時間に余裕あるならお昼一緒しません?」と人懐っこい笑みを浮かべた。



昼のピークが過ぎたからだろう、社員食堂には人の姿がまばらだった。
シビアな恋愛トークに花を咲かせる女性社員のグループや、自分の昼食の写真を携帯で撮影していた男性社員の後ろを通り抜けて窓際の小さなテーブル席を確保した。お互いバイキング形式を利用して好きなように埋めた皿を持って向かい合わせに座る。

「相変わらずよく食べますね」
「育ち盛りなんで〜。いただきます!」
「20代なら成長期は終わっていると思うのですが……」

その量に感心するパーキンをよそに、バーベリーは嬉々として山盛りにした料理にフォークを突き立てた。邪魔になるのかさすがにパペットは外してテーブルの隅に置いている。
もくもくと食事を始めた後輩の後を追い、パーキンも皿の料理に手をつけた。


昼食を平らげ、食後のコーヒーを飲んで一服する。
まだ二人とも時間があるため、ゆっくりと腰を落ち着けて途切れ途切れに話をする。会話の内容は共通の上司、お互いの仕事の進み具合などを経てパーキンの仕事相手のもとにたどり着いた。

「Umpireの総帥さん、どうすか?」
「前も似たような話をした気がしますが……」
「だってそりゃ年も近いし気になりますよ〜。おれも会ってみてえ!」

好奇心で目を輝かせるバーベリーに、「仕事の範囲が被るようにならないとですね」とパーキンは釘を刺した。そしてコーヒーを一口すすり、ほうと息を吐いた。
その内心でまだUmpire総帥である建前上の恋人の弱点を見つけられない、と臍を噛む。まったく歓迎する気になれない建前だが、ある以上はやはり使ったほうが目当てのものが見つかりやすくなるのだろうかと算段を立てる。もちろんパーキンとして過ごしている今その様子を表情に出すことなどしない。
向かいの席で一足先にコップを空にしたバーベリーはパペットをはめ直し、口をぱくぱくさせて遊んでいた。



2013.04.16

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