『……え、』
『…………』

総帥の言葉に代表は目をしばたかせ、リーダーは複雑そうに眉根を寄せました。
傍らに控える双子は、二人揃って意味ありげな笑みを浮かべています。

総帥はそんな代表とリーダー、自分の子供である双子を順に見回して大きく息を吐きました。
そして治療する役職を設けるには守ってほしい条件があると言いました。

『条件、ですか』

代表が思わず繰り返した単語に総帥はこくりと頷きます。


出された条件は、

【薬品類と人件費をUmpireが用意する代わりに治療をする人員はKeeperとTracerの各々で集め、責任の所在を決してUmpire側に問わないこと】

でした。





『どうして二人とも複雑そうな顔をしているの?』

総帥との話し合いを終えた代表とリーダーに双子の妹の方が声をかけました。
もう既に総帥は話し合いの席を退席して、別の場所で別の仕事をこなしています。

『あんなにかけずり回っていたじゃないですか。もっと嬉しそうにしたらどうです?』

双子の兄の方は邪魔そうに伸びてきた前髪を弄びながら言います。
そんな双子を見てリーダーは渋い顔でため息を吐きました。
代表も同じく渋い顔で首に手を回してコキコキと鳴らします。

『……お前たち、総帥に今回のことを進言したというか、言い包めただろう。長年続いてきたものが今の代表の行動一つで変わるとは考え難い』

『『ああ、分かりました?』』

『まだ学生の君たちが話し合いの場にいて、それでニヤニヤしてれば誰でも分かるよねぇ…君たち何を企んでるの』

『別に何も?疑心暗鬼ですね、年なんじゃないですか』

『君たちの日頃の行いのせいでやすやす信用できないんだよ。っていうかこちとらまだ20代前半だぞこのチビ』

『20をまわると老ける一方だと聞きましたけど。せいぜい更年期障害にならないように気を付けろよ』

『…はは、』
『ふっ』

『『爆ぜろ!!』』


『ぷぷっ、これだから男子は』
『おい、やめろお前たち』

『それにしても私たちってそんなに信用ないのかしら?ショックだわ』

『…申し訳ないとは思うが私も奴と概ね同意見だ。なぜ総帥に今回の件を進言した?』

『その方が将来的に私たちの得になりそうだったから』

『得に…』

『あのね、ゲームにはスネに傷持つ人からとことん普通な人まで色んな人が戦闘員として参加してるでしょう?』

『ああ』

『ゲームで大怪我して死んだ人によってはどこから嗅ぎつけてくるのか遺族が色々うるさいこともあるのよ…それってすごく鬱陶しいの。だからなるべくすぐに治療できる態勢を整えておいた方が死亡率も下がるし言い訳できるかなって』

『…………』

『でも私たちUmpireにもやることってそれなりにあるから治す人まで探すのは疲れちゃうわ。せっかくだから責任も治療する側で負ってね』

『それだけか?』

『うふふ、どうでしょう。でもお互いにメリットは大きいわ。手を組みましょう?』

『………まあ、お前たちらしいな』

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