リーダーの娘は、父親の突然の訃報にショックを受けました。

幼い頃からWar Gameについて知っていた彼女は、試合で命を落とすかもしれないということを分かってはいました。
実際に自分のことを可愛がってくれた父の部下が試合で大怪我をして搬送され、二度と会えなくなったこともありました。

ですが、それを分かっていても父親が試合で命を落とすということが彼女には想像しづらかったのです。
それはきっと彼女が父に抱いていた幻想と、対戦相手があの代表の青年だったからなのでしょう。バトルセンスが優れていると称賛され、リーダーの娘として期待されていた彼女にあの同年代の青年は何だか頼りなく見えたものでしたから。


けれども、その代表との試合の末にリーダーは命を落としたのです。

応急処置がされていれば助かる可能性は高くなったとはいえ、代表である青年との試合の後に彼女の父親は命を落としたのです。


TracerのリーダーもKeeperの代表も、今まで初代の血を引く者が、いわゆる世襲制で引き継いできました。次のリーダーを務めるのは長子であり男兄弟もいない彼女になるでしょう。

考えがたかった父親の死と、次期リーダーとしての重圧とで彼女の心はぐらぐらと揺れていました。



先代リーダーの葬儀が終わり、彼女は新しいTracerのリーダーになりました。

未だに彼女の心は不安定なままでした。



リーダーに就任してから少し経った頃、彼女は業務連絡のためにUmpireへ足を運びました。

『あ、久しぶり…かな』
『…………』

そしてそこで、Keeper代表の青年と鉢合わせました。
退院したようですがまだ完治はしていないようで、体のところどころが包帯やガーゼで覆われていました。

青年と彼女は年も近く、仲が特別悪いわけでもありません。
けれども今や彼女にとって青年は親の仇とも言えます。



彼女の手はいつの間にか青年の首へと伸びていました。



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