『医療班とか治療組ってどうしてあるんだろう?』


始めは単純な疑問だった。
そして誰も咎めるものはいなかった。物事に疑問が生じるのは普通のことであるし、その疑問は特に咎めるべきものではなかったから。
だがしかし、その問いへの正しい答えを持っている者がその場にいなかった。これもまあ偶然のことである。


そしてそして、答えのない問いは推測を呼んだ。推測は噂のようなもので、噂には尾鰭が付いて泳ぎ出す。


「普通に怪我人を放っておくのはヤバイからだろう。」「でも、試合の後で病院に搬送されることもあるんだから治療する役ってなくてもいいんじゃないの。」「応急措置しないと助からない場合ってあるだろ。」「そういえば医療班とかって割と新しい役職らしいよ。昔はなかったんだって。」「え、じゃあ昔は大怪我してもそのままだったんだ。」「いや一応病院には搬送されてたんだろ。」「でも応急措置しないと助からないのも措置せず病院だったんなら死人も出たかもしれない。」「見殺しにしてたってことか。」「見殺しって…。」「見殺しにしてたならどうしてわざわざ治療するようになったんだ?」


どうして?なんで?


『…上がさ、なんか企んでるんじゃないの。』

「上って。」「Umpireの双子とか。」「…Keeperの代表だって何かありそうだろ。」「じゃあTracerはどうだっていうんだ。」

『……………。』



推測は噂のようなもので、噂には尾鰭が付いて泳ぎ出す。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -