それは少し昔の、金脈を中心とした発掘がとても盛んだった時代の話。


鉱山の探索チームを組んでいた二人の青年がおりました。
二人の息はとてもぴったりで、過去に様々な鉱脈を発見してきました。
二人がいつものようにとある鉱山を探索していると、複数の石板を見つけました。内容は今もまだ使われ続けている伝統的な文字と、おそらく古代のものだと思われる見覚えのない文字とで書かれていました。鉱脈の探索を専門にしている二人には古代文字の方は何と書いてあるのかさっぱり分かりません。
かろうじて読むことのできた伝統文字はこう書かれていました。


『どうにか問題は解決できた。だが、またこんなことが起きたら今度こそ世界が終わってしまうのではないだろうか。』


この文章から二人は推測しました。「太古の昔に何か世界が滅びるほどの危機に瀕したことがあったに違いない。古代文字で書かれた部分にはその内容が書かれており、伝統文字の部分は長い時を経て事態が収まってから書かれたものなのだろう」と。
しかし、この石板をどうするかで二人の意見が割れてしまったのです。


曰く、石板に書かれた内容を解析して世界に発信するべきである。

曰く、内容を解析するのは良いがいたずらに情報を発信して混乱を招くべきではない。


二人はその石板を持ち帰り、それをひとまず彼らの仕事場の倉庫に置いておくことにしました。しかし、その内容を発信するしないで二人の意見は何日も並行線を辿ったままでまとまることはありませんでした。

そんなある日のことでした。
石板の内容を発信しない方が良い、と言っていた男がすべての石板とともに忽然と姿を消してしまったのです。
残された方の男は憤り、姿を消した男と石板の行方の捜索を始めました。なぜ何のことわりもなく突然姿を消したのか、そんなに自分が信用できなかったのか、と怒りと悔しさに身を焦がしながら。
友人、探偵、情報屋、物探し屋。あらゆる手段を講じて男は消えた男の捜索を続けました。鉱脈発掘で得た資金を惜しみなく使い、人手を増やして探し続けます。

一方、石板を持ち逃げした男は相棒に何も言わずに出ていってしまったことへの罪悪感にかられながら必死に逃走を続けていました。相棒が派手に動いて自分を探し回っていることに気付いてからは、より慎重に身を隠しながら。
石板を持って出ていく前、彼は自宅の書斎を整理している時に古代文字の解読法が記述された本を見つけました。
これは丁度良い、あいつと議論をするにもやはりここに書かれた内容が分かっているいないとでは変わってくるだろう。折角だから自分が解読し終えてから奴に知らせて、驚かせてやろうじゃないか。そう思って解読を始めた青年でしたが、古代文字の解読を進めるうちに彼の顔から血の気が引いていきました。

…これは、いけない。
こんなものの解読を成し遂げてしまっては、ダメだ。

解読を途中で止め、勝手に震え出す体を抑えながら彼は決意しました。
この石板は絶対に解読してはいけない。外に発信するなんてもっての外だ。
誰にも見つからないようなところに隠してしまわなければ。ああでもそんなところどこにあるんだ?

…でも、ここに置いておくわけにはいかない。こんなおぞましいものを知っているのは自分だけで十分だ。

そうして彼は全部の石板を抱え、解読した内容を記した紙切れを燃やし、逃げ出したのです。
しかし追う側と追われる側は多勢に無勢。石板を持ち出て行った男はしばらくは身を隠すことができていたものの、相棒とその雇われ手に発見されて詰め寄られます。

石板を返せ。それはできない。なぜ勝手に出て行った。それはすまない。どうして、どうして――…。


「じれったいなあ」


一向に話を進められない二人に耐えかねて、一人の青年が声を上げました。
二人ともその青年の顔には見覚えがあります。彼は追う側の男が相棒が姿を消した後一番に協力を頼んだ青年で、二人の共通の友人でもありました。
青年は友人二人の顔を呆れたように見てこう言いました。

「このままじゃあいつまでも君らの意見は平行線を辿るばかりで何も変わらないじゃないか。もう面倒だな、ゲームでもして決めろよ」

彼はそんな言葉にあっけに取られている二人のうち石板を持ち逃げした方に近づき、石板を奪い取るや否やそれらを思い切り地面に叩きつけて、踏みつけて、バラバラの欠片にしてしまいました。
そして砕け散った石板の欠片をおおよそ半分に分けて、双方に無理矢理渡しました。

「二人とも、そんなにやいやい言うなら何かで競うなりして奪い合いでもしろよ。それで、どちらかの持つ欠片の数が0になったらそいつが負け、石板は勝った方の好きな様にする。…ああそうだ、俺が勝ち負けの審判をやってやるよ。ついでにお互いの持ってる欠片の数も数えて把握しておいてやろう。

…どうせならそれで一儲けしてみようかなあ」


さくさくと話をまとめられてしまった二人は当然文句を言って一時的に結託しながらも口達者な友人に丸めこまれて結局欠片の奪い合いをする羽目になるのですが、それはまた機会があれば他のところで。

そして時は流れ、欠片の奪い合いは一つの娯楽へと姿を変えて現在に至ります。


さあ、争奪戦はいつ終わるのでしょう?





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