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ガッシャァァンッ!!! 派手な音がホールに響き渡る。 その音に、そしてその後の状況に誰もが眉をしかめている。 もちろん、その様子を眺めていたアマリーとリリスもその中の一人。 「案外派手なコトするのね」 「案外、アレが素なのかもしれないね」 リリスは騒然と映るモニターを眺めてクスクスと笑い、アマリーは苦笑を浮かべている。 先程、スピリットから入った連絡で心の込もった詫びを聞かされ、スピリットの行動は分かって居たのだが。 本当にケーキを台無しにするとは・・・。 パティシエにちゃんと詫び状を書かせなければいけないな。とアマリーは思う。 さて、まだ前半戦が終わったばかり。 手強いプレイヤーは未だ居るのだから。 ゲームはこれから後半戦だ。 「ミシェル」 「─1時方行9メートル先、ヴィオレッタさんの後方に居ます。アラモードさんは11時方向、8メートル先で此方を捉えています─」 「よし。」 未だ、ひっくり返されたケーキを囲む群衆は消えない。 スピリットは人混みから離れ、壁を背にもたれ掛かりホールを視線だけで見渡す。 ミシェルからの報告を受けて、スピリットは1時の方へ体を向ける。 「さて、やるか。」 スピリットは姿勢を正すと通りかかったウェイターから赤ワインの入ったグラスを一つ奪い一気に飲み干す。 空になったグラスをテーブルに置き去りにして、スピリットは駆ける。 カチリ、カチリ。 スピリットはアラモードとの距離を縮めながらアラモードを狙い撃つ。 スピリットの銃は引き金を引く度に赤や青のキャンディーが吐き出された。 アラモードもすかさずイチゴクリームの銃を抜く。 キャンディーとイチゴクリームの銃撃戦が繰り広げられた。 「まーたテーブルひっくり返すつもりっすか?」 イチゴクリームの香りに乗せて、アラモードはスピリットに問いかける。 「止めてくれ。パティシエ達に申し訳無いだろ」 スピリットのキャンディーはなかなか思う様な軌道を通らない様で、何度かアラモードを掠るが未だ一個も当てられていない。 「良かったー、ま。僕もお菓子蹴散らしたりしないんで、大丈夫ですケド」 アラモードは笑顔をスピリットへ向ける。 「それは良かった、これ以上パティシエ達に不快感を持たれちゃ客として気まずいからな」 スピリットは交戦する中で、4発。 不覚にも、足と腕、それから心臓から少し離れた場所をイチゴクリームで汚してしまった。 アラモードは平然とスピリットを捉えている。 キャンディーの銃はどうやら銃でありながら、長距離は向いていない様だ。 また人混みの中へ紛れるか・・・。 そんなコトを考え視界で人口密度の高そうな場所を探る。 「─4時方向に後退して下さい─」 スピリットは表情を変えることなくミシェルの指示に従う。 アラモードは人混みに消えるスピリットを追うことなく、人混みを挟んで向かい合うヴィオレッタとアイコンタクトを取り、ぺこりと軽く頭を下げる。 ヴィオレッタもアラモードと視線を交わして軽くうなずくと、大型の銃を握り、人混みの中へゆっくりとスピリットを狩りに出る。 人混みといえど、繰り広げられる戦闘の凄まじさを目の当たりにした誰もがこの余興に巻き込まれたくは無いのだろう。 ヴィオレッタが踏み込む度に人混みは徐々に散って行く。 そして、お菓子にまみれたスピリットの姿が明白になる。 「また、大げさな武器を選んだもんですね」 「パーティーならこれくらいの派手さは必要だろう?」 「それもそうか・・・その衣装も似合ってますよ、ヴィオレッタ」 「そうか、ありがとう・・・お前の仮装も様に成ってるじゃないか、伯爵。」 笑顔で向き合うスピリットとヴィオレッタ。 だが、そこに和みなど一欠片も無い。 ヴィオレッタが銃を構え引き金を引く。 飛び出して来たのは通常の3倍の大きさであろう金平糖だ。 「ヴィオレッタが一番物騒だな」 飛来してくる物を確認し、スピリットは少しばかり気を引き締める。 「そうか?ならせいぜい痛い思いをしない様に気を付けるんだな」 的をスピリットだけに絞り、ヴィオレッタは引き金を引き続ける。 玩具とはいえ、50センチはあろう銃を扱うのは重労働だろうに、ヴィオレッタは隙を与えてやる程甘くはない。 「なんて無茶な」 一切の抜かりの無さ。その体制のヴィオレッタを前にスピリットは呟く。 「そうか?私はただそれらしく銃を扱っているだけだ、無茶と言えばスピリットの方だろ?あんな派手にやらかすとはな」 ヴィオレッタは楽しげに笑みを浮かべ、ホールに流れるジャズに合わせステップを踏む。 踊る様にスピリットとの距離を詰め、スピリットの心臓へ銃口を構える。 イチゴクリームの甘ったるい香りが、ヴィオレッタにも届いた。 「吸血鬼が相手なら狙うは此処だな・・・まぁこの距離なら痣くらいで済むだろ」 「容赦無しだな」 「当たり前っすよ先輩。僕負ける気無いんで」 ヴィオレッタに詰められたスピリットの後頭部に、背後から銃を突き付けるアラモードが冷静に言う。 「終わりだな。スピリット」 スピリットと限りなく近い位置で、ヴィオレッタのエメラルドの瞳と、銀の瞳が煌めいた。 「あぁ、みたいだな」 ヴィオレッタのエメラルドの瞳と良く似た翡翠の瞳が揺れる。 スピリットは三日月に笑った。 スピリットは最後に悪足掻き、至近距離でヴィオレッタの心臓を狙いヴィオレッタより一瞬早く引き金を引く。 しかし、それは空しく、スピリットは後頭部にイチゴクリームと心臓に金平糖を食らう。 「っぶねー・・・・・・」 アラモードは間一髪。目の前のスピリットを仕留めることに成功したのだ。 しかし、判定の結果ヴィオレッタは敗退。 すこしばかり悔しそうな表情を見せている。 「ま。コレで僕の勝ちっすね、先輩。」 「お前の?おいおいこれはチーム戦だぞ。」 一言アラモードへ声をかけるスピリットの表情は未だ明るい。 「え?」 その刹那だった。甘い香りがアラモードの鼻をつく。 それはスピリットが浴びたイチゴクリームや周りのお菓子のそれとは違う。 その正体に気付いた時には遅かった。 白やピンクのマシュマロが辺りに飛来してきている。 それは間違いなくゲームの参加者を狙っていた。 アラモードが視線をスピリットから人気の引いている正面に移す。 其所にはマシンピストルを構えるミシェルの姿が有った。 ミシェルは無表情で、的に集中し引き金を引く。 「あ・・・ミシェルちゃん?え、先輩囮!?ちょっタンマって!」 無数のマシュマロがアラモードはもちろん、ヴィオレッタやスピリットさえも無差別に攻撃を仕掛ける。 体中に地味な痛みを受けながらマシュマロを浴びた審判チームの唯一の生き残りだったアラモードもこのマシュマロにはかなわなかった。 この一撃で、勝者が決まった。 そして、ホールに流れていたBGMが静まり返りホールの照明が落とされる。 スポットライトはこのゲームの勝者となったミシェルを照らし出した。 BGMはゲームの勝者を祝うかのように盛大なクラシックを奏で始めた。 ミシェルはマシンピストルから離れ、にこやかに手を振っている。 「さて、皆様。このハロウィンパーティーの余興。楽しんで頂けましたでしょうか?」 「ゲームの結果は僕、アマリー・チームの勝利と決まりました!皆様の予想通りとなりましたか?」 「「余興はこれまで、皆様、まだまだこのハロウィンパーティーをお楽しみ下さい!!」」 ホールの中心では、余興を始めた時の様に、アマリーとリリスが余興を締める。 黄昏の中のTrick or Treat. 盛大なお菓子塗れの悪戯が今、一時幕を下ろす。 その後、リリスの元へ有りと有らゆる菓子がUmpireのメンバーから贈り届けられた事はまた別の話─。 END。
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