タイトル
名前 ※必須
メール
ホームページURL
本文 ※必須
街は朧月を無視し、ネオンによって明るさを保っている。 街を見下ろす様に存在するUmpire総統の仕事場である執務室には、何時もの様に高く積まれた書類に目を通し淡々と仕事を済ませていくアマリーと、その傍らで粛々とお茶の準備に取り組むスピリットの姿が有った。 「スピリットさん、喉が乾きました。」 「はい、只今。」 アマリーから注文を受けた後、間もなくスピリットは書類が並ぶディスクとは別の場所に設けられたティータイム用のテーブルへお茶の一式をセッティングする。 アマリーも仕事を切り上げ、少しばかり高価なティータイム用のテーブルと揃えたチェアに腰をかける。 お茶の準備が整ってから、アマリーは静かに、翡翠色に揺らめく緑茶を嗜む。 「そうだ、スピリットさんにもコレを」 一息付いてから、アマリーは胸ポケットから一通の封筒を取り出し、それをスピリットへと手渡す。 スピリットが受け取った封筒は深紅のキャンドルで封をされた柄のないオレンジ一色の封筒だった。 「これは?」 「読めば分かりますよ、その為の手紙じゃないですか」 「はぁ・・・では後ほど確認させて貰います」 アマリーにもっともなことを言われて、スピリットは改めて封筒に視線を落とす。 表にも裏にも何も書かれていない封筒の口を堅く閉ざしているキャンドルは、不気味な程細かく再現された蜘蛛の形を押しつけられていた。 「今開けて貰っても構いませんよ?その方が話が早く済みますし」 「今ですか?・・・では、失礼します」 アマリーの許可を貰った後で、スピリットはジャケットに忍ばせていたナイフを取り出し封を切る。 封筒の中身は、黒一色の厚紙に白字で文章が印刷された手紙が一枚。それは明日の午後6時にカジノで開かれるハロウィンパーティの招待状だった。 ─招待状。 この度カジノにて開催致しますハロウィンパーティーに是非ご参加下さい。 ドレスコードは仮装が必須の条件となります。 尚、武器は此方が用意致しますので持ち込みは禁止とさせて頂きます。─ 一通りの文章を読み終えてから、スピリットは目の前で悠然とお茶を楽しんでいるアマリーに視線を送る。 「ハロウィンパーティーを、折角ですからスピリットさんも楽しんで貰おうかと思いまして」 「では、この物騒な最後の一文は?」 「Trick or Treat.ハロウィンは悪戯有ってのものですよ?」 「悪戯・・・」 「あなた方の戦闘力の高さは十分知っていますから、殺傷されては悪戯じゃ無いですし、パーティーも台無しですからね」 「成る程。招待、ありがとうございます」 「いえいえ。あと。特別にスピリットさんには一足先にその武器を選んで貰いましょうか」 アマリーは言うと、お茶を終えた後で席を立ち、執務室の奥から大型のカートを引っ張り出してきた。 「さて、この中から好きなものを好きなだけ持っていって下さい。」 そう言うアマリーが運んで来たカートの上には奇天烈な形の銃が並んでいた。 それは言うなれば水鉄砲に似ていた。 ずらりと並べられた銃。 スピリットはその中で、普段から使いなれている大きさに一番近い銃を一つ手に取った。 「では。コレを使わせて頂きます」 「はい。ではパーティーを存分に楽しんで下さい」 ネオンが街を灯すその片隅で、独りおぼろげに笑う三日月はひっそりと沈み。 やがて太陽が朱に染まる。
編集パス ※必須
ファイル
著作権、肖像権、その他の法律に違反する画像、アダルト画像等のアップロードは禁止です。
発見された場合には刑事告訴、著作権者による賠償金請求の可能性もありますので注意して下さい。
※アップした人の情報は全て記録されています。
編集
記事削除
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -