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PS. 朝日はやはり偉大だ。 この圧倒的な光と共に、人間は活動を再開させるのだから。 それでも好きに為れない太陽光から逃げる様に、スピリットは歩道橋から移動し、未だ静かな大通りの一角に止めていた愛車へと乗り込んだ。 エンジンを掛け、そろそろ次の目的地へ車を走らせようとアクセルを踏む。 そのタイミングで、スピリットの携帯電話が特定の人物でしか鳴らすことの出来ない音楽を車内に響かせた。 「はい、スピリットです」 「そんなことは分かっています、今は勿論、仕事を一山片付けた所だとゆうことも分かっていますよ」 「小型カメラですか、ペンにでも忍ばせましたね?」 「嫌だな、ただ純粋に部下を信頼してこそですよ」 「俺には勿体無いお言葉です。それで、ご用件は?」 「ああ、今丁度お茶にでもしようかと思っていたんですが、茶葉が切れてしまったので。紫藤堂の栗蒸し羊羮と白緑園の玉露100gを買って来て下さい」 「こんな時間にお茶ですか」 「茶屋は朝が早いので問題は無いでしょう、頼みましたよ」 「それから、私はメルヒャン・クラウスのとろけるプリンが食べたいです」 「副総統まで、起きて居たんですか」 「「楽しみにしてますからね」」 分かりました。 そんな分かりきった応えを聞くのは最早聞き飽きたのだろう。 それでも口にしたスピリットの返答は空しく。 主人に届くことのないまま、通話が終了したあの一定のテンポで流れる音と重なった。 仕方なく、スピリットは車を、先ずは贔屓にしている茶屋に向けて走らせる。 その後に和菓子屋へ寄るとして、副総統が所望したプリンは、どうしたものかと考えながら良い案を模索する。 全く。老舗の茶屋や和菓子屋、洋菓子店からすっかり良いお客様として扱われる様になってしまったスピリットだが、こういった少々無茶な注文さえ聞き入れてくれる程、立派な顧客になってしまう等、これも、あの日から変わっていったことの一つだ。 茶屋と和菓子屋で時間外営業での丁重な買い物を済ませ、なんとか洋菓子店でプリンも入荷と同時に手に入れらた。 ミッションを終わらせ二人の元へ向かう中、日の出の時間帯が本格的にやって来た。 幸い、太陽はフロントからではなく、バックミラー越しに輝き登り始めているのが分かった。 これからも。 何が変わろうが。 太陽を背にしながらでも、退屈しない方へ向えれば良いと思う。 頭の片隅で物思いに更けりながら。 スピリットは、道路に誰も居ないことを良いことに、標識に書かれた時速の倍の速さでで車を走らせ街を駆け抜ける。 おかげで、スピリットが二人の元へ戻った時には未だ太陽は地面を這っていた。 「頼まれていた物です」 スピリットは茶屋、和菓子屋、洋菓子店、それぞれが丁寧に品物を包装して渡してくれた紙袋をテーブルの上へと置いた。 アマリーとリリスは普段通りの格好で、一人用のソファに一緒に腰をかけテレビを眺めていた。 「ありがとう、案外早かったですね」 「あら、太陽は低いわね、この辺はビルが多いからだま薄暗いし、つまらないわ」 アマリーはテレビを眺めたままで。 リリスは唐突に、窓の外を確認してアマリーの次に言った。 「はい?」 リリスが一体何の話をしているのか、まるで見当が付かないスピリットは半分聞き流しながら包装を片づけていく。 アマリーはテレビを消して、作業するスピリットの方を向いて言った。 「いやぁ、スピリットさんが朝日を浴びるとどうなるかと思いまして」 「貴方、朝苦手でしょ?」 それで、スピリットはさっきのリリスの言葉が自分に対して言われたのだと気付く。 「はいはい。特に変わり無くて残念でしたね、今お茶の準備して来ます」 「灰にはならないの?」 「副総統、本気で言ってますか?」 「どうなんですか」 「総統まで・・・なりませんよ」 「そうなの・・・でも、おかげで作りたてのお菓子が食べれるからラッキーよね」 そうか。 結局は何も、変わっちゃ居ない。 太陽は只、何も無かった顔でそんな時間の中を照らし、平然と過ぎて行くだけで。 また今日も一日が始まって行く。 きっとずっと、この人達の隣で退屈しない日々を過ごしていくんだと、スピリットは頭の片隅で考えていた。 ─END─
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