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ぎりぎりになりましたが、テキストっぽいものができたのでいちおう投下しますね) からんからん。 グラスと氷のぶつかる音がした。営業中は店内BGMやお客さんの声が飽和していて、こんな微かなものを聞き取ることは稀なのだが、今日の入りの少なさを思えばさもありなんか。 振り返るとウイスキーグラスを片手に手招きする男性がいた。呼び鈴……ではなかった気がするけど、まあいいか、と歩み寄る。ご注文ですか? お客さんは椅子に座った状態でも僕と目線の高さがほとんど変わらない。ずいぶん背の高い人だ。何を食べて育てばこうなれるのだろうか、無意味な疑問が頭の中で反復横飛びを始めた。いけないいけない、仕事中だ。 「チーズの盛り合わせを」 改めて確認するとテーブルには呼び鈴がなかった。またどこかの酔っ払いに持ち去られてしまったかどうかしたのだろう、あとで報告しておかなくては。 「雰囲気のいい店ですね。誰か連れてくるべきでした」 「あ、ありがとうございます」 誰かを待っているわけではなかったのか。 優しげな視線をグラスに注いで、お客さんはくつろいでいるふうだ。それを見るととても安心する。 なぜならここは諸事情あってあまり穏やかでないお客さんが来ることも多い店だ。僕はいちおう正社員なので上の主宰しているゲームというやつの日程くらいは把握しているけど、実際ここで働いていればそれが行われた日かどうかはすぐわかるようになる。店内に満ちる空気が変わるのだ。ひどいときは騒がれたり喧嘩されたりでほんとうに手がつけられないし、そうでなくとも重苦しくて、疲れる。 でもここは本来なら、彼らを慰労するために作られた場所のはずだ。とりあえず僕はそう思っている。 そしてたぶん僕の五感が急におかしくなったりはしていないと思うのだけど、あの紳士的なお客さん(いまちょっと見てみたら傍のテーブルのお客さんと談笑していた)からは、ほんの少しだけ薬品の匂いがした。ここでそんな匂いがついている人間の種類はたかが知れている。僕の経験からいって、あのゲームの関係者である可能性は十二分にあると言っていい。
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