それでも、僕は | ナノ


▽ 2




 「きみは、だれ‥‥?」

 クソジジイに殴られた時よりも頭が痛くて、真っ白になった。コイツは何も憶えちゃいねェ
 
(俺が、あんなこと言ったから‥‥だから俺はもう二度とアランと家族になれねェのか?)

 __伸ばした手が思わず止まる
だがコイツはお構いなしに俺の手を強引に引っ張り頬に当てて嬉しそうにしやがる


 最期に聞いた言葉通り、俺がいないと息ができないのかアランの後ろには酸素マスクやらがたくさん備えてある。
なにも憶えちゃいねェのに、コイツは俺がいないとダメなのか

 ポロポロ泣きながら俺に縋り付くアランに今までの息苦しさが嘘のように消えていく


  __なぁ、俺たちは双子なんだ。息苦しかったのはお前だけじゃねェ
今は双子どころか、家族ですらない俺の片割れ。サボたちにも手伝ってもらって必死になって探した俺の、弟

 俺ですら息苦しくて、辛かったってのに、寂しがりで怖がりの俺の弟は今までどれだけ苦しい思いで生き延びてきただろうか


「遅くなって、ごめんなァ‥‥!!」

 もう二度と、苦しい思いなんてさせねェから。もう一回、お前の兄でいさせてくれ

 細くてすぐに消えてしまいそうな弟がもうどこにも行かないように、強く抱きしめた。



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「で、今日はどうだったんだ?」

『近所の公園まで散歩してきた』

「そうか。‥あれから毎日見舞い行ってるんだろ?そろそろ俺らにも紹介してくれよ」

『そうだなァ‥‥‥』


 煮え切らない返事をするエースに苦笑する。まだ暫くはエースだけの弟として満喫したいらしい
小さな独占欲を見せたエースの意外な一面に俺もルフィも目を丸くした。

「前回だってルフィはともかく、俺は会ったことすらねェんだぞ。俺だって会いてェよ」

『あー‥‥』

 冗談三割、本気七割でエースに言えばあからさまに話題を逸らされたあと強引に切られた。こりゃ今日もダメだな

 いつになったら4人目の兄弟に会えるのやら。見つかった当初は祝福したりしたが、なかなか合わせてくれずに最近ではずっとルフィと文句ばっかり言ってる
 前回を含めればルフィは一度会ったことがあるらしいが、キライと言ってしまったらしく顔を真っ青にしていた


「今日もダメだったんだ?」

「もう何日経ってると思ってんだが‥‥俺とルフィも兄弟ができるの楽しみにしてんだけどな」

 ルフィにとっては兄だが、俺にとっては可愛い弟がもう一人できるようなもんだ
独り占めしやがって、とここにいないエースに恨みを込めつつ書類を捌いてたらルフィから電話がかかってくる。
会えない兄弟の話ばっかりされるから、最近ではエースの電話の後はすぐ俺にかけて愚痴大会を開催してる


『なァ!俺もう我慢できねェ!!会いに行こうぜ!』

「‥‥ん?会いにつったって部屋番号も知らねェだろ」

『エース、今日はもう一回病院に行くみてェなんだ!ビコウだ!』

「あー‥‥‥いいな。すぐに迎えに行く」


 近くにいたコアラに出掛けてくるとひと声かけ、エースを尾行するために駐輪場に向かう。
 後で文句言われるんだろうな、とぼんやり考えるが、まァ、隠してるエースが悪い

 エースには似てないんだったな。どんな奴なんだろうな
期待に胸を膨らませながら、ルフィが待ってる場所へと俺は急いだ

 悪ィなエース。俺たちも早く兄弟に会いてェんだ!


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