コラボ小説 | ナノ



月光蝶





闇夜に孵る輝く光

美しい蝶の姿をしたそれは
一夜の栄華を愛しむように舞い続ける…





「…此処、何処…?」

誰とも知れず呟かれた言葉に応えるものは何もない。

少女は酷く冷静だった。

目の前の光景、拓かれた空間。
ゴツゴツとした岩肌、冷えるような暗闇。
それなのに、少女の周りは明るく、幼い顔立ちや華奢な体の輪郭を淡く浮き立たせていた。
少女の周りを舞うように飛び交う、蝶の放つ、儚げな光によって────


「…あなた達はなぁに?どうして光っているの?」

少女は自分の周りを舞う不思議な蝶に問掛ける。
もちろん、応えるのは静寂のみ。

「どうしてこんな処に居るの?」

少女は構わずに続けた。

「…寂しくない…?」

蝶達は少女の問掛けなど風にも感じぬ風情で舞い続ける。

「…応えてくれないんだね…」

少女は言いながら手をかざした。
蝶が一羽、少女の細い指先に停まる。


…その時。

…じゃり、と地を踏む音が響き、少女は振り返った。

そこには、一人の青年が立っていた。

赤いリュックを背負い、服と同じ黄緑色のサンバイザーを被った、金髪の青年。
手にはクリスタルのついた、釣竿を持っている。


「…君は?」

少女の存在に驚きもせずに、青年は穏やかに呟いた。

茶色の瞳には、声と同じ穏やかな光を宿している。

彼も同じく光る蝶を連れている。
青年の出現に、少女の周りを飛んでいた蝶も彼の方へ飛んでいく。

よほど彼に慣れているのか。

「…あなたは?」

少女は表情も変えず尋ねた。
青年が穏やかな微笑を浮かべる。

「僕はカジカ。ようこそ、僕等の庭へ…」

「…庭?」

少女が怪訝な顔をして返す。

「そう、此処は僕等の庭…はじめまして、可愛らしいお嬢さん」

青年────カジカは紳士がするように会釈の礼をする。

「君の名前は?」

柔らかい笑顔で再度尋ねられ、少女は彼を凝視した。

「…鈴沙」

「鈴沙…綺麗な名前だね」

カジカの目が、穏やかに微笑む。

「ねぇ、『僕等』って、その蝶達もそうなの?」

少女────鈴沙は思った事を尋ねてみた。
カジカは穏やかに笑ったまま頷く。

「そうだよ。此処は僕と『彼等』の庭さ。そして僕は、彼等の守人…」

「守人…?」

「そう…ついてきてごらん、見せてあげる」

そう言って差し出された手を、鈴沙はゆっくりと取った。




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