コラボ小説 | ナノ




ゆっくりと手を引かれ、奥へ奥へ進む。
蝶達が追うように鈴沙の周りを舞い交う。

「僕以外に、こんなに懐いたのは初めてだよ」

カジカはそう言って嬉しそうに笑った。

「あなた…」

「カジカでいいよ」

「カジカ…は『守人』って言ってたよね…『守人』って何なの?」

鈴沙の問掛けにカジカは一瞬黙る。

「『守人』…『守る人』と書いてそう呼ぶ…。僕は此処の空間に在るものを守る役なんだ。
読んで字の如くね」

「…この蝶達は?」

「ついてくれば分かるよ」

カジカはにこりと笑ったまま言った。暫く歩くと、次第に周りの光が強くなっていく。

「此処だよ」

カジカに促され、奥へ入ると、其所は広い空間になっていた。
その最奥にカジカの釣竿と同じクリスタルが密集していた。

蝶を同じく、淡く輝く光。それが洪水のように周りを満たしている。

「…綺麗…」

鈴沙は呟いた。クリスタルの光が彼女の琥珀色の瞳を反射する。

「…これは…?」

鈴沙はカジカを見上げた。

「これは蛹だよ。このクリスタルがあの蝶が孵る前の姿さ」

「……」

カジカの言葉に鈴沙は耳を疑う。

「…それ、何かの創り話…?」

「…違うよ。ホントの話さ。創り話なんかじゃない」

「だって…クリスタルが蝶になるなんて…」

鈴沙は信じられない、とかぶりを振る。

「有り得ないと思うだろう?でも本当なんだ。こいつらは此処でしか生息しない。
ひっそりと孵り、一夜が明ける瞬間にひっそりと朽ちる。そういう性質があるんだ」

ひざまづいてカジカはクリスタルをそうっと撫でた。

「朽ちる…って…死んじゃうってこと?」

「そういうことになるかな」

カジカは哀しげに微笑んだ。
鈴沙はその場にしゃがみ込むと、クリスタルのひとつを撫でる。
途端、大きな瞳から大粒の雫がひとつ落ちた。

「…っ」

撫でる手を止めず、鈴沙はその小さな肩を震わせていた。

「…泣いてるの…?」

カジカはその小さな背中に跪き、肩に触れる。
少女は答えず、ただ、嗚咽で答えた。

「…君は優しいんだね…」

カジカは切なげな笑顔で、彼女の柔らかな髪を撫でる。


「君みたいな人が居てくれるだけで嬉しいよ…僕も…蝶達も」

そう言って、カジカは優しく鈴沙の背中を抱くように包んだ。
蝶達が、そんな二人の様子を見守るように飛び交っていた。




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