「わたし」を主語にして良かったことなんてない、けれど(※未完)



わたしがその星の存在を知ったのは昨日のことで
そのときにはもうその星は完全に消滅しており
あとたった数年ですべての光を地球に届け終えてしまうことが確定していた
何ということはない
教科書で習う偉人も大体すでに消滅している
文字に記したから今も見えているだけで
届けるものがなくなればいずれ見えなくなってしまう
かもしれない
教科書といえばわたしはよく算数の時間に国語の教科書を読むような不埒な人間であったが
教科書に線を引くという行為にどうしようもなく抵抗があり
その最初の一線を越えるまで相当の葛藤に苦しんだような気がしている
苦しみながら見つめた教室の床は
木目の正方形のパネルが組み合わさったもので
25かける25マスの敷き詰められた木目が直角と平行を生み出して
このマス目をうまく使って遊んだらきっと楽しい
線の繋がりと繋がりの向こうから
七不思議の七番目に出てくるタイプのお化けが覗きこんでいるのでつい目と目があってしまいたいへん気まずい
もちろんこれは嘘でわたしの学校は七不思議のないタイプの学校だった
そもそも25かける25マスも当てずっぽうで正しい枚数は数えに行かないとわからないし
数えに行ったところでもう木目の正方形のパネルではなくなっている可能性すらある
こればかりはわたしにもどうすることもできない
何となく記憶の中の
25かける25マス分の交点から
一つ一つ選択肢が分岐していくように
見えると見えないの境目で覗きこんでくる
七番目のあいつの
黒い瞳を取り出して打った
先手右上スミ星
これは残念ながら中盤で相手に取られてしまうことが確定している
ところで25かける25マスは少し大きすぎる
大きすぎるけど教室なので仕方がない
たぶん教室とか大きければ大きいほどいいし
体育館ぐらいあった方が何かと捗る
四丁目ぐらいあってもいい
掃除の時間はルンバをせめて10台ぐらい走らせておきたい
掃除の時間特有のクラシック音楽にあわせて線の上を進んでいく10台のルンバ
そういえば放送委員になると放送室でクラシック音楽を流す役目が与えられるので
掃除の責務が免除されるのだった
他にも放送委員は何かと特例が認められており機材もいろいろ触れる
羨ましすぎるが大勢の人間に声を届けなくてはならないのが無理すぎる
ハロー、ハロー、
わたしの小さな声はどこにも届かず消えていく
体育館よりも広い四丁目よりも広い右上スミの小さな点より
誰からも見えなくなってしまった小さな小さな星へ



ここまで書いて北京五輪が始まって久々にスケオタ充してさあ続き書くベと思ったらロシアがウクライナに侵攻したので何もかも意味が変わってしまいこの作品はここで終わりです










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