やがて沈んでしまった赤信号の果て
なにもいないをたべて質量を増幅させる化けもの
どちらかと言えば暗めの影法師をだらしなく提げながら
秋は喪うように終わろうとしていた、
その身の輪郭を切り取る悲鳴の焼べる細い人差し指250421098本分のビタミンを摂取した化けものの口元から滴る蜜の中央に空いた虚がゆるやかに拡大し星と星とを一筆に繋いで投影する、
流れたまま覗き込むように見つめ続けるようにそこは誰からも蔑まれない場所かたちづくってもかたちづくっても融けてぜんぶ溢してしまうあやふやの隙間、
朽ちた雑居ビルの番号キー、
取り外されたブランコの片割れ、
見ていたはずの夢の残滓、
ゆめ と かわいい をやわらかく繋ぎ合わせる粉ミルクの錆びた空き缶、
ひっくり返した穴あきの底が切り取る、
切り取られたまるいまるい端々の歪な空だけが夕闇のなかで眩しい、
とまれ。
しずんでいこうとするもの。
枝をはなれようとするもの。
危険を意味するはずの赤い赤い空気を吸い込んで、等しく影に染まる町、こきゅう、ふかく。
安らかにのびていく化けものの終着点。たった一枚剥がれ落ちている葉脈に標され、傷も塞がず立ち尽くしている、一筆に繋がったままの、両腕を失った案山子の群れ。蹲ることのできなかった、彼らの脚から地を這うように、黙ったまま、黙ったまま、張り巡らされたアスファルトを包み込みながら、ここにはもう何もいない、手のなる方へ、手のなる方へ、やがておとなわれていくように。





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