どうぞめしあがれ(国影) 珍しく青城と烏野のバレー部の休みが被り、影山と二人きりで国見の家にいた。特に何をするでもなく、お互いの指を手慰みにしながらソファーに座っている。二人とも自分から話すタイプでは無いため、交わされる会話は疎らだ。国見が昼飯どうする、と言い出した矢先に、付けっぱなしだったテレビから愉快な音楽が流れてきた。短い時間を銘打っておきながら、その時間では作ることの出来ない料理ばかりを作る料理番組である。どうやら今日のレシピはグラタンらしい。影山の目が輝いたのが、はっきり分かった。 「なぁ国見、コレ食いたい」 「……作れるか知らないよ」 そう言いながらもリモコンを操作して、料理番組の録画を始めた。見ている限りはそんなにも難しそうでは無いし、材料も多分ある。 「作ってみる?」 そう言うと、影山は力強くおぅ、と返事をした。 180センチ越えの二人でキッチンに立つと、結構圧迫感がある。 「じゃあ、始めるか」 録画した番組を、見ては止めて、作業する。そうして2時間後、1つの大皿がオーブンから取り出された。それはとてもグラタンとは言い難い、真っ黒な未知の物体だった。 国見と影山はとりあえずそれを食卓に運び、向かい合わせになって座る。 「……食べるか」 「食えんの?」 「さぁ」 フォークでそれを一口分掬い、恐る恐る口に運ぶ。 「うまいか?」 「凄い不味い」 国見はしれっと答えた。影山は大皿をフォークでつつきながら、苦い顔をしている。国見はそんな影山を見て、もう一口グラタン(仮)を掬った。 「影山」 声を掛けると、影山の顔が上がった。その目の前にフォークを差し出して言う。 「ほら、アーン」 影山は一瞬真っ赤になって、それから口を尖らせた。 「不味いんだろ?」 「不味いよ。ほら、俺がアーンってしてるのに食べないの?」 意地の悪いことを言った自覚はある。こう言えば影山は逆らわない。ゆっくり開かれた口を見て、愛されてるなぁなんて思った。影山の口の中に、グラタン(仮)と俺のフォークが吸い込まれる。影山はそれをあまり咀嚼せずに飲み込み、先程より苦い表情を見せた。 「クッソまじぃ」 「だろ?」 国見も苦笑いを零す。それから、影山は何か思い付いたような顔をしてグラタンを掬った。 「国見、アーン」 フォークには、国見が救った量の2倍はありそうな黒い物体が。 「……多くない?」 「コイビトがアーンしてんのに食わねぇのか?」 なんて仕返しだ。国見が諦めたように口を開いてそれを食べると、影山はご満悦とでも言うように微笑む。相手に弱いところはお互い様だ。 国見はまたグラタンを掬い、影山の口に近付ける。影山もまた国見にフォークを差し出す。 そんな応酬の末に、大皿が空になった。口の中に残るのは不快感ばかり。 「気持ちわりぃ……」 「俺も」 それからどちらかとも無く、二人は顔を見合わせて笑った。 最早白くないホワイトソース、茹ですぎてぐちゃぐちゃのマカロニ、形が不揃いの玉葱とマッシュルーム、エトセトラ。黒焦げで原形なんか留めていなかった。だけど、まぁ悪くない昼食だったかな。 どうぞめしあがれ (僕の愛) (お腹壊しても知らないよ) 2013/05/17 休日/手料理/黒コゲ 30000打企画。こころちゃんのみお持ち帰り可能です。リクエスト有難うございました! * 七ジルシ。の七愛ちゃんから三万打のフリリク国影を頂きましたー! お互いアーンってする国影は正義ですね。重要な事なのでもう一度言います、アーンってする国影は正義です!(超笑顔)七愛ちゃんの書く国影は明暗のギャップが最高に素敵で…もう書き手諸共好きです…好きです…! ところであの、この国影ちゃん共同製作のグラタンはいくらでお買い求めできるんでしょうか?(財布を握り締めながら) 素敵な国影をありがとうございました!これからもずっと応援してます! |