雰囲気えろ
キスの合間に影山は小さく、けい、と僕の名前を呼んだ。それを皮切りにジャージの中へ手を忍ばせて腰を撫でるとぴくりと真っ黒な髪を揺らす。影山は冷たそうな見た目に反して体温が高い。末端冷え性の僕には酷く心地の良い温かさだ。もう一度くちびるを啄んで、胸の飾りをいじる。窓から射し込む月の光に照らされた影山の瞳は瞬いたら零れてしまいそうな涙が張っていた。
「なんで、泣きそうなの」
まなじりにキスを落とすとわずかに涙の味がする。影山はハ、と吐息で笑って、僕の頭に手を伸ばして髪に触れた。そうして緩慢な動きで指を動かす。撫でられているだけなのに、どうしようもなく煽られた。
「お前の髪、月の光受けてキラキラしてんのが…綺麗で」
切なげな顔で僕の頭をかき混ぜる。パチリとまばたきをすると涙がひと粒シーツに消えていった。
「お前の名前に、ぴったりだ」
85.蛍