「俺思ったんだけど」
「あ?」
「影山、王様よりお妃様のが合ってるよな」
「…あ?」

休憩中にサッと隣にやってきたと思ったら、日向はいきなり頭の悪いことを言い出した。まず俺は王様じゃねえししかも女じゃねえ。日向は頭が悪い。見てわかんねーのかボゲ。言いたいことが瞬時にいくつも出てきて、結局声に出す前に日向が喋り始めた。

「声高らかにもの要求するのって、王様よりお妃のイメージあんじゃん」
「知るか」
「そ、想像しろよ!かかと高い靴履いた美女が目え吊り上げてシモベに命令してんの!」
「……」
「ほら、影山顔はきれいじゃん?で、かかと高い靴履いた並に背高いし。しかも」
「まだあんのか」
「一番大事だから!お前がお妃たる決め手!」

お妃たる決め手ってなんだ。日向は興奮したように腕を大きく上下に動かしている。その動きなんか意味あんのか?
さして話題に興味がなかったので、思考は日向の腕の動きに移っていた。そのおかげで日向の興奮が表情に表れていることに気付けない。日向はふへへと笑いながら俺に人差し指をつきつけた。

「お前、セックスするとき女役じゃん!」

体育館が静かになる。部員が少人数とは言えそこそこ賑わっていた体育館が、静かになる。そしてその少人数の視線は全部俺たちに突き刺さった。それに気付かない日向は「わかったか?」なんて得意気な顔をしている。ぷちん、と頭の中で何かが切れた気がした。

「て、てめえが、てめえが痛くしないって言うからだろうがボゲエエエエ!!!!」

怒るところずれてるよ影山、という菅原さんの呟きは聞こえなかった。


14.王様


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