二口×茂庭




(HQ)


この国にはあまりにも常識人が多すぎる、隣に腰かける彼は笑顔を隠した無表情でそう言った。

「人っつーのはもっと自由に生きていいと思うんですけどねえ」

自由だ何だと言っておきながら常識を少し超えただけで難しい顔をされるのだと二口は辟易と言った風に吐き捨てた。その感覚が自称常識人たる俺にはぼんやりとしか理解が出来ない。確かに二口は変わったところがあるかもしれないけど、そんなものは個性の範疇だ。そう告げると二口はこちらを一瞥して口だけで小さく笑った。それを見たら石板に払い落とせない砂がかかったような気分になった。

「茂庭さんは常識を辞書でひいたことありますか」

答えはノーだ、首を横に振る。二口は続けて話す。

「一般人が持っている、または持っているべき知識。そんな風に出ました。大体の意味は想像通りでしたけどね、常識ってもんはあくまで一般人が持っていなきゃいけないもんらしいんすよ。ねえ茂庭さん、俺の言っている意味がわかりますか?」

これも答えはノー、だった。二口は立ち上がって居場所を俺の横から目の前に移す。今日の彼はことごとく笑わない。それが怖いというわけではないけれど、切なさに似た感情が俺を小さく揺らした。
酷く哲学的で曖昧な話題だ。誤魔化すわけでもなく素直に難しいねと言うと二口は「茂庭さんはそれでいいんですよ」と俺の右手を大事そうに握った。


哲学系問題児
よくわからない




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