高尾+緑間




(965)


緑間の放ったボールは宙に綺麗な弧を描いて、静かにネットをくぐる。ゴールの真下に居た俺はボールが地面に落ちて静かな空間を壊す前にそれをキャッチした。真夜中のストバスのコートは暗くて寒い。

「…相変わらず絶好調だね、真ちゃん」

近所迷惑を考えたわけじゃなかったけど、いつものように声を出せなくて呟くように話しかける。暗くても緑間が眉を顰めたのがなんとなくわかった。

「相変わらずも何もない、人事を尽くしているのだから決まって当然だ」

「そっか、そうだね」

「…お前こそなんなのだ、高尾。こんな時間に人を呼び出して」

「んー…」

緑間を呼び出して、挙げ句シュートを打って欲しいと頼んだのは俺だった。でもその行動の意味なんて実は自分でもわかっていない。俺は何をこんなにも弱気になっているのだろうか。
コートがまるで海のように見えたのだ。暗い海面には何が潜んでいるのかわからなくて、俺は一歩を踏み出すことすら出来ない。この上を沈まずに歩けるだろうか、走れるだろうか。そんな悩みも知らず、緑間はコートの海面に平然と立つ。恐れ入るなあ、本当に。嘘臭い笑顔を張りつけると苦い表情のまま緑間は「よせ」と言う。


携帯のメモに以下略




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