寒川×舞苑




(俺様先生)

寒川→舞苑
なんかもう普通に長いです


「寒川が殴ってくれたら、そのたびに一回キスしてあげる」

何事もないように舞苑は言った。何事もないというのは、例えば男同士の粘膜と粘膜をくっつける行為であったり、尊敬し尚且つ恋慕う相手を殴るという行為をものともしないという意味である。寒川はくるくると目眩がした。舞苑の被虐趣味にはほとほと呆れてしまう。

「そんな。無理です、先輩」

「どうして?寒川は俺とキスしたくない?」

「そりゃ!…し、したいすけど。でも、駄目です」

「んー?」

舞苑は普段の無表情を少し崩してよくわからないという顔をした。お互いメリットしか無いのに、どうして。寒川を見つめたまま思考に耽る。寒川は顔を赤くした。
舞苑の提案は確かに寒川からしてもかなりの好条件ではあった。東校番長の肩書きを担ぐだけあって人を殴ることは慣れている。それに、この性的倒錯者は寒川が殴らなければ大久保や山下、あるいは二人が尊敬してやまない黒崎の方へふらふらと流れていって終いかねなかった。そんなのはごめんだ。
しかし。

「俺、普通のやつなんで。好きな人殴るとか、むりです」

「その好きな人が喜んでキスまでするのに?」

「だって先輩、俺のこと好きなんかじゃないのに」

「……」

「そんな人にキスされたら、もっとぐちゃぐちゃになる」

東校番長の寒川航平はあくまでもまだ高校一年生だった。どんなにがたいが良くて、どんなに喧嘩が強くても、まだ幼さの抜けきらない平凡な子供なのである。それに気が付くと、舞苑はなんだかじわりと愛おしさが溢れてきて、寒川にそっと近付き垂れた目元にキスを降らせた。驚いて身を引こうとする寒川の顔を固定して、今度は文字通り口づける。熟れた林檎のような顔をした寒川はキスをやめない舞苑を見て泣きそうになりながら「殴りませんよ」と叫ぶ。

「違うよ寒川、俺がしたいからするんだ」

頼りない大きな子供は、ついにぽろりと涙を落とした。


精神的には舞寒




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