木吉×伊月←日向




(965)


!病み日向


世界はいつだって俺の心情なんて無視して回って、よくわからないことばっかりで。
ただはっきりしてたのは、指越しに伝わる自分以外の体温と、苦しそうに喘ぐ声だけだった。


「……ぅ、あ」

「……‥」

「くるし、…っ」

「……‥」

「息、できな、…!」

「……‥」

「ひゅ、うが…ッ!!」


どうして。
疑問を大いに湛えた伊月の目には、今にもこぼれ落ちそうな涙が溜まっていた。
どうしてだろう。俺にも解らない。
いつものように伊月が木吉と楽しそうに話をしていて。
いつものように体を近付けて、いつものように木吉が周りを確かめて、いつものように2人はキスをした。

ただひとつ、いつもと違ったことは。
俺がそこに居合わせたことだった。
顔に似合わず強かな木吉が俺が隠れていることに気が付かないわけがないのに「いつものよう」なことを止めなかったのは、俺の伊月に対する思いを知ってのことだったのだろうか。
ならば、最後まで守っていれば良かったものを。

木吉が伊月に別れを告げて、伊月が呆然と突っ立ったままの俺を見つけて、見てたのか、気まずそうに、だけど頬を染めたまま、そう言った瞬間。
俺の両腕は勝手に伸びて、伊月の白く細い首に、指を絡ませた。



過去log(一部加筆修正)





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