鹿島×堀




(野崎くん)




やってしまった。

どうしてだかわからないけど、部長が御子柴の写真を片手に持って私の顔をまじまじ見つめてきたから。それから、ときどき思い出したように「お前の方がイケメンだよなぁ」と呟くものだから。
何より上目遣いが、可愛かったから。

部長相手に、思わずキスをしてしまうなんて。


「…………」
「あ、あのー…部長?」
「…………、……」
「部長ー…?もしもーし?」


ちょうど良い身長差だったからとても自然な流れでキスをして、その後すぐ我に帰った私と目を見開いたまま完全にフリーズしている部長。ああ、こんなことで部長に引かれたらどうしよう。嫌われたらどうしよう!
こんなとき普通なら、ていうか少女漫画だったらこんなとき部長がときめいちゃうみたいな展開なんだろうか、そんなことなら普段もうちょっと女子っぽく生きていればよかった。それかいっそ男になれたらいいのに。そうしたらこんなことは冗談だって笑い飛ばせるし、男女間にありそうな面倒くさいことにはならないのに!


「あの、部長、あのですね、」
「…………鹿島」
「ぅハイッ!?」


いきなり名前を呼ばれて焦る。私の方を向いていた顔はいつの間にか俯いていて、ワックスで整えられた髪が視界いっぱいに入る。何を言われるんだろう、ドキドキしすぎて心臓がぐらぐらする。


「…………お前さ」
「な、なんでしょうか?」
「ああいうこと、他のやつにはすんなよ」
「え」


俯いていた顔は毅然とした表情となって再び私の方を向いた。他のやつにはすんなよ。それはつまり。


「いきなりの独占発言…!?」
「はあ?違えよ阿呆!!」
「えぇ…じゃあ何ですか」
「そんな面しててもお前が女ってことに変わりねんだよっつってんだ。今回は相手が俺だったからまだしも」
「はあ…?つまり?」
「……もういい面倒くせえ。誰にでもキスすんなってだけ覚えとけ」
「誰にでもだなんて、」


相手が、部長だったからに決まってるのに。
そう言ってしまえばこの件(まるで私がキス魔のように思われてること)は丸く収まるだろうに、言ってしまったら何かが終わってしまう気がして口を噤んだ。
その間に、部長は身を翻して部室を出て行く。笑うことも茶化すことも出来なかった。

「…キスしたい相手が部長だけなら、してもいいってことなのかなぁ」


ひとりで笑ってみても乾いた空気に馴染むだけでなんだか酷く虚しい。現実逃避も容易くなかった。







いろんな意味で堀ちゃん先輩大好きすぎる鹿島くんとそういう意味では一切意識してない堀ちゃん先輩な鹿堀が好き




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