∴黒尾×影山




(HQ)


吸血鬼黒尾×生贄飛雄



村の最奥の地にある巨大な壁に文字が刻まれていることが発見されたのが月曜の朝だった。
山の頂にある古城に潜んでいるらしい吸血鬼に恐れて、もう100年以上が経過した。昔は誰もが身を震わせて怖がっていたその存在も、1世紀経てば自然と忘れていく。俺も吸血鬼というものは知っていたけどまるっきり信じていなかった。

そんなある日、壁にはっきりと「我と共通せし者を一人生贄として献上すべし」と書かれていたのだ。村長を中心とした周りの大人たちは誰かの悪戯だと決めつけて放置していたけど、その日から起こり始めた数々の変死事件に目をつむっているわけにもいかなくなった。
そこで誰を生贄にするかとなった時、村中の目が真っ先に俺を見た。埃を被った古い本に書いてある吸血鬼の特徴といえば、鋭い歯牙に赤い瞳。そして、艶やかな黒髪だった。その特徴で共通しそうなのが髪の毛で、村の中に黒髪は俺だけだったからだった。
とうに両親は死んで村の中でも貧しい暮らしをしていた俺を生贄にすることを悲しむ人間は誰もいなかった。せいぜい近所のガキが喚く程度。
壁に文字が刻まれてから一週間経った月曜の夜、肌触りの悪い大きめの麻の服を1枚着せられて、手足を太い棒に括られた状態で古城の前に立たされた。別れの言葉も告げずいそいそと帰って行く村民の足音を聞いて、初めて恐怖心が湧いた。

生贄って何されんだろ。
干からびるまで血、吸われんのかな。

城までの縷々とした道をぼんやりと見つめていたら突然目の前に黒い影が現れた。それと同時に息を呑み、いよいよ死を覚悟する。本にあったのと全く同じ特徴の男。いくらかの身長差があるにも関わらずよく見える犬歯に、紅蓮の瞳。そして俺と同じ、真っ黒の、髪。


「へえ…こりゃまた随分綺麗な贄じゃねえか」


顎を掴んで、持ち上げられる。悲鳴になり損ねた嗚咽が出た。吸血鬼の目が細くなって口角がぐっと上がった。









 
 
なんちゃってファンタジー黒影




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