∴及川×影山
(HQ)
外科医及川×後天性盲目影山
「怖くないんです、手術は」
俺の隣でベンチに座る飛雄は綺麗な笑顔を作った。ほとんど光の入らない視界で俺を見上げて片手をさまよわせる。その手を握らずには居られなかった。
「見えなくなるって聞いた時は、そりゃ、ショックだったけど。どうして俺が、って思ったけど。でも俺だけが辛いんじゃないし、母さん達も居るし、及川先生だって居るし」
「………」
「見えなくなっても声が聞けるし体温を感じられる。だから最悪、手術が失敗して全盲になったって怖くないんです」
痛いのは嫌だけど、冗談を言うように飛雄は笑う。本当に綺麗な笑顔だった。外科医になってからこれほど後悔したことはない、この子の目を、俺が治せたらいいのに。視界一杯に俺を映せるようにしたいのに。太陽に透けてきらきら光る黒い髪の毛を撫でた。飛雄は見えるに越したことはねぇけど、とぎりぎり聞こえる声量で呟く。
「手術も、見えなくなるのも、その後の生活も、怖くない」
「…じゃあ、何が怖い?」
握った手に力がこもる。風が吹いて、木々がざわめいた。綺麗な笑顔が切なそうに歪んで俯いた。
「先生の顔を忘れることが、一番怖いです」
飛雄がだれおまシチュを説明しないとわからないシリーズ
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