カヅサ×クラサメ




(FF-0)

6章ネタバレ





カヅサはぴくりと眉を片方動かした。何だ、何事だ。よくわからないが今確実に彼の胸中にはひとつの違和感が生まれた。満足という単語に不が付いてしまうような。ワンホールのケーキが歪んだ五等分にされているような。魚が鳥を喰らうような。男が胎児を宿すような。大きいのか小さいのかもわからない、まさしく得体の知れない違和感が不気味で背筋を震わせる。カヅサは謎が解明できないことを酷く嫌い、畏れていた。暴きたいことがあれば己の肉体が破壊されようが誰かの精神が破壊されようが知ったことではない。知りたいことを追求し、暴き、晒す。そうしてカヅサの欲求は満たされた。知を得ることでカヅサは快楽に浸っていた。気持ちがいいね、楽しいね。人の良さそうな笑みを浮かべていれば人は人を許すのだと、カヅサは知っている。


そしてその暴走を止めていたのが、カヅサの中にぷかりと浮かび上がった違和感だった。一体何だと言うのだろう。誰も自分を止める人間は居ないのだから、羽を伸ばして実験対象を狩りに行きたいというのに。カヅサは自身の感情がわからず動揺した。違和感はカヅサの中で虚無感に変わり、とうとう立ち尽くす。何かが足りない。真ん中のピースが無いジグソーパズルの曖昧な風景を見ているような気持ちだった。あぁ、僕は探しに行かなければ。カヅサの足は出口へと動きクリスタリウムから出る。どこに行くというのだろう。足りないものは、僕が欲しいものは、彼の服、彼の靴、彼の皮膚、彼の肉、彼の骨、彼の血、ああ僕の何より大切な。








「クラサメ、くん」







はて、この名前は誰であっただろうか。












 
クラサメさんが死んだあとのカヅサが暗い森で迷子になった子供みたいで悲しくなった




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