「チッ……」

それにしても、相変わらず純さんが気に
食わない。不意に舌打ちをした。貴重な
情報を教えてくれた事については、感謝
するが、それとこれと話は別。雫の肩を
抱いたり腰元に腕や手を回したり……。
彼氏がその場に居るにも関わらず、この
セクハラの数々。雫も雫で嫌がらないと
思えば抵抗もしなかった。寧ろ、前より
親しい気もする。二人が話す姿を離れた
所で見ながら考える俺が、視界に入って
しまったのだろうな。よりにもよって雫
では無く、純さんが近付いて来やがる。

「明らかに不機嫌な顔で睨むなよ」

どうやら俺は、無意識の内にムッとして
見るからに不機嫌そうな表情をしていた
らしい。眉間にシワを寄せ、純さんへと
ひたすら眼を飛ばし続ける俺を、今度は
柔らかく宥めようと駆け寄って来る雫。

「忍? どうしたの?」

そう尋ねる雫に対し、冷たく愛想も無く
「何でも無い」と言い放つと、純さんは
俺に喧嘩を売る。すると、意図も簡単に
ぷっつりと堪忍袋の尾が切れてしまう。

「雫と仲良くしてる俺に、嫉妬してるん
だよな?」

最早、開き直ってるさ。吹っ掛けられた
挑発に乗った。既に怒りは頂点に達して
しまったみたいだ。今の俺は餓鬼で嫌な
奴にしか見えないだろう。それでもこの
感情は押さえ切れず、もう止めらない。

「そうだ、その通りだ。悪いか?」
「全然悪くないよ? それに、俺ってば
悪いだなんて一言も言って無いし――」
「二人共止めて! 仲良くして!」

最後の言葉に目を見開き、喧嘩の張本人
達は間抜な顔をして互いを見た。滅多に
怒らない温厚な雫が、今は頬を膨らませ
ながら、ぷりぷりと可愛く怒っている。
大事な事なので、もう一度言おう。雫は
これでも怒っているつもりなのである。

「純さん、僕の恋人に挑発しないでよ。
忍も! 純さんはただの親戚の人なだけ
で、疚しい事なんて何一つ無いから」
「あらら、お兄ちゃん地味に傷付く」

純さんが奏の親戚の人……?だから名前
呼びで親しいのか。もっと早くに言って
くれたら良かったのに、と思うが、俺も
悪かった。俺は頭を下げ「ごめんな」と
素直に謝る。雫の事だから、簡単に俺を
裏切る人間では無い。なのに何で、俺は
こんなにも焦っていたのだろう。余裕が
無さ過ぎて、今思い返せば馬鹿みたい。

「ううん。それに、僕も純さんが親戚の
人って言って無かったもんね。ごめん。
でも嫉妬してくれて嬉しかったよ?」
「当たり前だろ! 嫉妬するに決まって
る。俺は雫を誰よりも愛してるから」

すると「僕も」と言って抱き着いた雫。
俺の胸板から顔を上げ背伸びをし、唇が
触れるだけの可愛らしいキスをする。雫
からのキスが嬉しくて、一端離れた唇を
直ぐに追うと深く口付けた。このキスに
想いを乗せ届ける。――愛してる、と。

「うん……俺の存在、無視?」

そんな小さな呟きも聞こえない。俺達は
二人だけが纏えるピンク色な世界を作り
上げ、悔しがる奏さんを尻目に、目一杯
イチャイチャする恋人同士を堪能する。
これからは、より花咲家の親戚の方々と
仲良くしないと駄目みたいだな、なんて
一人考えながら抱きしめる力を強めた。

ほんのり辛く、ちゃんと甘い。

“ミントチョコレート”の恋。

[ 4/10 ]

[*prev] [next#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -