その日はレンの部屋で砂月は曲を作り、部屋の主であるレンはソファで寛ぎながら雑誌を読んでいた。これは二人の中では珍しいことでもないし普段通りだった。ただ何かを一緒にするのではなく、会話がなくとも同じ空間にいる ― それだけで二人は満足していた。
 

 
でも気づいたら俺と砂月は言い合いになって喧嘩していた。

 
「どうせ俺はシノミーみたいに人のことを癒してあげれるわけでもないし、居ようが居まいが一緒さ」
「はぁ…なんでそうなるんだよ」

「俺のだいじなもんに文句つけんな」

「そうだね…シノミーをもってきて…。比べられるものじゃないね…」
「そういう意味じゃねえだろ」

 
二人の言い合いは平行線を辿り、お互いそっぽを向いてしまっていた。喧嘩の原因がなんだったのか最早、思い出せないでいる。しかし、お互い自分からは謝るなんてことは一切考えていない…結果そのせいで折角の休日が不穏なものとなっている。
 
 
ガチャガチャ。
ドタドタ。
 
 
二人の間になんとも言えない空気が漂っていた、まさにその時。玄関が開く音がし誰かが入ってきた。
 
 
レンが住むこの部屋の鍵を持つ人間は限られている。だからこそレン自身、誰が入ってきたのか分からなかった。そして砂月も何が起きているのか理解できていなかった。
 
そしてリビングのドアが開き、入ってきた人物は ―
 
「おはやっほ〜レンくん元気かにゃ〜?」
「…HAYATO?」
「そうだにゃ〜お仕事が休みになったからレンくんに会いに来たのにゃ〜」
 
 

部屋に入ってきたのはあのトップアイドルであるHAYATOだった。確かにトキヤを通じてHAYATOとは顔見知りになったがレンはなんとなくHAYATOが苦手だった…あの時分の本心を見透かされている気分になるからだ。
 
 
しかしなぜか、レンはHAYATOから好かれていた。事あるごとに話しかけられたり食事に誘われたりと周りの人間からしたら ”HAYATOはレンを狙っている” とすぐに気づいた。
ただレンは自分に対しての好意にかなり鈍かったため、そのHAYATOの想いに気付いていなかった。
 
 

するといきなり、HAYATOがレンに抱き着いてきた。レンはびっくりしたもののすぐに慣れ「何するんだい?まったく…」などと言いながら優しい目でHAYATOを見ていた。それを良いことにHAYATOはレンの項などにチュッチュとキスを落とし始めていた。
 
 
ぼーっとそれを見ていた砂月だが、ハッと我に返り勢いよくHAYATOの腕の中からレンを引っ張り出す。
レンを抱き締めながらHAYAYOを睨み返すとHAYATOも挑発的な視線を送ってきた…レンの知らないところで二人の静かな争いが火蓋を切って落とされた瞬間だった。
 
 
 


ヒーローはヒロインに



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