5月15日。
今日はまぎれもなく俺の誕生日…でも芸能人にはそんなもの関係ない。むしろそれを理由にして稼ぐ事の方が常だ。そう…日向龍也の誕生日もまさしくそれだった。




この日はとあるバラエティー番組の収録。司会者の他に出演ゲストはほぼと言っていいほどのシャイニング事務所の面子である。龍也、林檎、ST☆RISHに先輩組も…。他にもタレントは出ているがむしろシャイニング事務所によるシャイニング事務所の為の番組だ。






収録は特に何も問題も起きず順調に終わり、そのまま打ち上げと龍也の誕生日会が開かれることになった。出演者や番組スタッフもいれて百人近い人たちが集まり、それはそれは大きな会となった。ST☆RISHのメンバーはみな成人しており、各々にお酒を飲みながら龍也にそれぞれ祝いの言葉をかけたりスタッフと楽しそうに話したりしていた。





龍也自身も林檎や後輩、スタッフからたくさんの祝いの言葉ももらい密かに喜んでいた。しかし、ふと気づく。確かにみんな祝ってくれた…しかしあと一人からはまだ祝ってもらっていない。


早乙女学園に在籍していて、俺の教え子だった神宮寺レンだ。在学中は授業をさぼったり課題はみ提出だったりと散々、俺を困らせてくれた奴だったが…時折見せる寂しそうな瞳だったり実は周りと一線引いている姿に気付いた時…なぜか守ってやりたい、とそう思ってしまった。そして、龍也とレンは卒業したと同時に付き合いだしていた。
だからレンが今日、誕生日だと知らないわけではない。なぜだ。





そう疑問に思い一緒に飲んでいたスタッフに詫びをいれ、レンを探した。しかしレンの姿はなかなか見当たらない…少しの焦りと不安が胸を支配する。あの見た目と言動からレンは酒が強そうに思われるが実は誰よりも酒が弱い。しかも酔っ払うと誰彼構わず絡んだり甘えたりキスをしたり…レンは酒癖が悪い方だった。






(くそ…っ!あいつ、どこだよ!!)

若干苛立ちながらレンを探す。しばらくしてやっとレンの姿を見つけた。そして龍也は絶句した…レンは翔と今日の番組のディレクターと数名のスタッフと飲んでいたようだ。しかしディレクターに随分飲まされたのかレンはかなり酔っ払っていた。


顔はほんのり赤いだけだがレンのことをよく知る龍也からしたら、遠めからでもレンがかなり酔っ払っているのがわかった。






(あんの、バカが…っ!!)

そう悔しさを表に出してしまいそうになるのを我慢し、レンを連れ戻そうと歩みを進めようとしたその時だった。






レンがディレクターに抱き着き「大好き!」と言いながら頬にキスをしたのだった。レンやその周りにいたスタッフは一気に盛り上がり、そのまま放っておくと唇にまでキスをしだす勢いだった。


しかし、それに気付いた翔がレンをディレクターから離そうとした時だった…レンの腕を龍也がぐいっとひっぱりそのままレンをどこかへ連れていってしまった。




その場にいたディレクターやスタッフはポカーンとしていたが林檎が一早く、我に返りそれに続くようにトキヤや翔がフォローを入れてその場はなんとか治まった。








一方、龍也とレンの方は―。






「いったぁ…い…もう…だ…れ…?…ってりゅうやさん…?」


レンが自分は龍也に連れられているのだと気づいて声をかけるも龍也は何も答えない。龍也の背中からは怒りのオーラが出ているのだけはわかったが、レンには先程の記憶が曖昧なためなぜ龍也が起こっているのか理解できていなかった。






気付くと龍也のマンションに着いていた。そのまま部屋に連れていかれ、龍也のベッドに押し倒されてそのまま激しいキスをされる。唇が離れ、龍也の顔を見ると…怒っているような悲しいような顔をしていた。




「どうしたの…リューヤさん…」
「どうしたもないだろ…!お前は何したか分かってんのか!!」
「…」


レンは頭を左右にふる。




「俺が…!年甲斐もなく自分の誕生日が楽しみで…待ち遠しかった…って言ったらお前は笑うか?」
「え?」
「お前と付き合いだして、お前と一緒に何かを重ねていくことが…俺の中で少しずつ大切なものになっていってんだよ…!だから今年も実は密かに楽しみにしてた…まぁ…仕事だったがその後にお前と2人きりで過ごすのもいいかな…って思ってた」




「でもさっきの…お前があのディレクターに”大好き”って言いながらキスしたのを見たら…なんかよ…体中の血が沸騰しているみたいに熱くなったんだよ…」
「…俺…ごめっ…覚えてない…」
「あぁ…だろうな。お前、かなり酔っ払ってたもんな…」




「分かってんだ…あれはお前の意志でやったんじゃないって…。でも理性ではそう理解してるんだが、本能では止められなかった。気づいたらお前の腕引っ張ってた…悪りぃな…痛かっただろ?」


そう言いながら龍也はレンの手首にうっすら出来た痣を撫でた。その時の龍也の切なそうな表情と暖かい手のひらの温もりにレンは泣きそうになっていた。




そしてレンは気づくと龍也の体に抱き着いていた。


「ごめん…ほんとにごめん…!!せっかくのリューヤさんの誕生日なのに…こんな嫌な思いさせて…」
「分かってるよ…何、お前まで泣きそうになってんだよ…ばか。」








龍也の表情は愛おしそうに慈しむような瞳と表情をしながらレンを見つめそしてそのままキスをした。




















ただ、すき



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