靡く青い髪を見つけた。













部活があるのかを確認するためにテニスコートへ走ったがいつもの音は聞こえない。
もう帰っちゃった?
下駄箱に向かい靴を確認する。


「…まだある……!」


教室、廊下、いろいろなところを探し回る。
一階の廊下を通り掛かった時に私は中庭に青い髪を見つけた。

思わず声をかけそうになったがそれも止める。

精市の他にもう一人、人がいたから。

廊下の窓が開いていたため中庭の会話は丸聞こえだ。
中庭から見えないようにしゃがみ込む。




「…幸村君彼女と別れたって聞いて…。よかったら付き合ってくれないかな」



告白。
そうか、精市のことを好きだったのは私だけじゃないんだ。
柚月ちゃんはもちろん、精市モテるから。
告白は妨害していいものじゃない、そう思い後の精市の言葉を待った。




「…ごめんね。君の気持ちには答えられない」

思わず息をのんだ。

「どうしてか聞いてもいい……?」

女の子は泣きそうな声で精市に尋ねる。
告白は妨害しちゃいけない、と思いながらも心の中では喜ぶ私がいた。
こうゆうところもすごい自分勝手。





「好きな子がいるんだ。フラれちゃったけどね」

「それなら…っ!」


「でもその子を好きじゃなくなれるか、って聞かれたら無理なんだ。…ずっと一緒にいたのにこの気持ちに気付けなかった。多分ずっと、好きだった。気付かないフリしてたのかもね…。関係を壊したくなかったから。そんな俺はすごい自分勝手。今更告白したって関係を壊すのには変わりないのにね」


自嘲気味に笑う精市の声が聞こえた。


「ごめん、なんか語っちゃって」
「ううん、…幸村君にそう思われてる女の子…幸せだね……」


足音が一つ聞こえ、私は軽く放心状態になっていた。
しばらくはここから動けそうにない。


「誰?さっきからそこにいるの」

急に向けられた声に驚く。
多分私の事だろう。
ゆっくり立ち上がり窓の方を振り返ると二日前の朝と同じように精市と目があった。

「……なまえ…」

なぜか鎖骨あたりが痛くなる。
精市は私から先に視線を反らすと口角を上げる。

「聞いてたんだ」
「精市に話があるの」

「…なに?」

一旦目を閉じる。
弱い私は今精市の顔を見るのが怖い。
だけど、ここで見なければ一生私は後悔する。


「精市が私を好きって言ってくれた時夢じゃないかってほど嬉しかった。今更言っても信じてもらえないかもしれないけど、小さい時からずっと…精市が好きだったから」


精市は黙って私を見ている。
その顔は初めて見る顔で私の知らない精市もまだまだたくさんいるんだな、って改めて思った。


「でも、…ここで私が精市と両想いになったら幸せになるのは私だけじゃない?そう思うと…何かいろいろ考えちゃって…」


頭の中がごちゃごちゃしてうまく話したい事が伝えられない。
また鎖骨あたりが痛い。
涙が浮かんできたから咄嗟に下を向いてしまった。


「結局、私はずるいやつなの…みんなの事を1番に考えるフリをするような……偽善者なの…」

「そんなのみんなだよ」


前を向くのと同時に精市に窓越しに抱きしめられる。
一瞬の出来事に頭が追いつかない。


「精市…っ?」

「なまえが偽善者だったら俺はどれだけ悪者になるんだろ…。ここまでくるのに人を傷付けすぎた。なまえだって傷付けた。…それでもやっぱりなまえが好きなんだ。もう関係を壊すとか言ってられないね…」


こんな声をする精市は知ってる。
だから、そんな精市の背中に手を回した。
精市の私を抱きしめる力が強くなったのは気のせいじゃないとと思う。










「…今は?」
「え?」
「ここまで話しても俺のことを好きでいてくれてる?」


精市の体温がじんわりと伝わってくる。
幼い頃からずっと好きで、今までこの気持ちは変わらなかった。

「うんっ…」

好きになった人が私を好きでいてくれる。これ以上の幸せはない。
幼なじみから恋人へ。

1番距離は近そうでその距離は遠い。

私はきっとこの先もこの人を好きでい続ける。


「なまえ、好きだよ…。これからも…ずっと…」


「なまえちゃんは誰が好きなの?」
そう私に問い掛けた彼はもういない。
そう思っていた少し前。
だけれども、あの頃の私ももういなかった。
変わっていくものが多いけれど、変わらないものもたくさんあると思う。

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