音をたててロッカーの扉を開けると隣にいた赤也が肩をびくっと震わせた。
赤也はそんな俺をちらっと見てささっとでていく。
「幸村先輩、彼女さんと別れて悩んでるんスかねー」
「それはねぇだろぃ。幸村君からフッたんだからよ」
小さくため息をつくと余計にけだるくなって、
「疲れとるのぉ…」
そんな俺は、仁王が隣に来たことに全く気がつかなかった。
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「…別にそんなことないよ」
「ほぉ」
しばらく沈黙が続く。
ふ、と昨日の柚月の泣き顔が浮かんだ。
「幸村はどうして別れたんじゃ」
不意な質問に多少の驚きを覚えた。
「俺がフラれたから…」
「幸村からフッたって聞いたぜよ」
「…………」
「じゃあ質問変える」
仁王はバタンとロッカーを閉める。
「なまえへの気持ちがそこには絡んでるのか」
心臓が揺れた。
「…どうゆうことだい?」
「こっちが聞きたい」
最近のなまえとの距離は曖昧だ。
遠のいたと思ったらまた近付いて、でもその近付きは今までと違うような気がして。
でもそれはお互いの自分の心変化に気が付いたからなんじゃないか。
俺が偽ってただけ。
「好きだよ、なまえが。友達とか幼なじみとかじゃなくて、恋愛感情的に。俺はなまえが好きだ」
これが俺の気持ちなんだ。
言葉にして初めて知ったのかもしれない。
それか今まで言葉にしなかったのか。
どちらでも、俺は自分を偽っていたんだ。
「そうか」
仁王はラケットを手に持つと部室からでていった。
静かな部室に一人。
認めてしまえば怖いものなどない。
そう思った。
「もう少しはよう言ってやればあいつは辛い思いせずにすんだんに…」
部室の外で仁王が呟いた声はもちろん俺の耳には届いていない。
「精市っ!!」耳をすませば君の声はいつでも聞こえてくる。
それくらいの距離にいると思ってた。