「今日うち来ない?」
「え?」
「最近全然来てないなって思って」
「あ、そうだね…。じゃあお邪魔するよ」


繋いだ精市君の手は冷たかった。


好きになったのは高1の春。
同じクラスになって初めはなんとも思わなくて、だけど話すうちに彼の笑顔が好きになった。
目を細めて笑う彼が愛しかった。
気遣ってくれる優しさも、彼の声も全てが。
彼の笑顔がもっと見たいと思った。
告白したのは夏だから、付き合いだしたのも夏だ。
告白した時も笑ってくれた彼だから。


「…柚月?」
「っ…、今日寒いよね…」
「そうだね」


精市君は口角を上げる。
胸がきゅーっと苦しくなった。



















「お邪魔します」
「どうぞー」
「あれ、お母さんは?」
「今日いないの」
「…そうなんだ」

部屋に入り、カーペットの上に座る。
入れた紅茶が湯気をたててる。
精市君は紅茶が好きなんだって知って、いろんな紅茶を飲んでみた。
すごくおいしかった。
いろんな味、香りがあって。
色も綺麗で。
混ぜるとカップの中で紅茶がたてる波も好き。
穏やかで、なめらかで。

「そうだねー。今日の数学難しすぎて本当わかんなかったよー」

紅茶を混ぜる。
なみをたてる紅茶。
私の顔が紅茶にうつった。






「!!」

精市君の驚いた顔が私の下にある。
腕を引いて精市君をベットに押し倒した。
彼は顔を普段の顔に戻す。
そんな彼の頬に水滴が垂れた。


「…何で…何にも言わないの……」


彼は黙ったまま。


「…何とか言ってよぉ……」


精市君の胸に倒れ込み胸を叩いた。涙が視界を歪ませる。

私の啜り泣く声と叩く音だけが部屋に響く。



精市君はただごめん、と呟いた。
その声を聞く度に涙が溢れた。
好きになった声が、そう呟いてる。
好きになった笑顔が、見えない。
好きになった優しさが、涙を止まらせない。


顔を上げると精市君と目があった。
涙を一回流しもう一度目を開ける。
出来る限り口角を上げて、言葉を発した。


「私に言うことあるでしょ?早く…区切りつけさせてよ……」


出来るだけ明るく言うつもりだったのに途中から嗚咽で上手く言葉が出せなかった。
けど、これが私の精一杯。






*






大好きだった。
彼の笑顔が。

繋がれた手は永遠に繋がれるものだと思ってた。

彼の彼女に似合う女の子になりたかった。


けれど、
気付いてしまった彼の気持ち。
気付かないフリをしたかった。
けど、できなかった。


「精市君を好きになってよかった…なんて…」

本当私ってこうゆう性格なの。
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