いつもより遅い時間に家を出る。
家の門を開けると精市のお母さんもちょうど出て来た。



「おはようございます」
「なまえちゃんじゃない!!おはよう」
「どうかしたんですか?」
「精市ったらまたお弁当忘れてって。これで何回目かしら、もう…」
「よかったら、持っていきますよ」
「あら、本当?じゃあ…お願いしちゃおっかな」
「はい、大丈夫ですよ」



精市のお弁当を受け取り笑顔でそう答える。
これくらい当たり前だ。

だって幼なじみなんだから。














今日はいつもより2本遅い電車に乗った。


「あ、おはよう仁王」
「…おはようさん。お前さんがこの時間って珍しいのぉ…」



まだ眠たそうな目をした仁王に出会う。
仁王はいつもこの時間なんだっけ?


中学生の頃を思い出す。

結構朝苦手な私。

けど精市と同じ電車に乗りたくて毎日頑張って起きた。
けど、苦手なものは苦手で。
いつもより遅く起きた時にはいつも仁王と被ってた。


「その弁当…」
「あ、これ?精市の」


仁王は一瞬目を見開いた。
だけどすぐに目を細めそうか、と言う。


「夢から覚めた感じ」
「今が夢なんじゃなくてか?」



「ううん……今が現実。私は精市の隣にいる人じゃなかった…」
「だから幼なじみに戻るんか?」
「うん」
「今更戻れるのか?」
「……戻らなきゃ」




「…昨日聞いたんじゃ」


仁王は申し訳なさそうにそう言う。
昨日って、柚月ちゃんと話した事かな…。
聞いてたんだ。


「…そっか」


現実は少し暖かい風が吹く。
もうすぐ季節が変わるのだろうか?
その風が私の目を乾かした。
乾いた目から涙が流れる事はないと思う。


だから、



「もう別にいいんだ」



少し強がってみるのもいいかもしれない。



「勘違いだった、」



少し夢とは逆の方向に逃げるのもいいかもしれない。



「そう思えれば」



また、笑顔になれれば。








「精市にはあの子がお似合いだよ」




「せいいちっていうんだ。よろしくね」
精市と出会って早14年程が過ぎた。
その間にいろんな事があったけど、どれも思い出せるよ。
今までありがとう。そして…―――
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