18話


何故こうも運が悪いんだろう?
今日私があそこへ行かなければ私はあんな場面見ることはなかった。

また、私は裏切られたのかな?



「先輩っ!」
「麻奈」



「絶対先輩を一人にせぇへん」

「約束やからな」





「…やめて……」

重ねたくない。
忘れたい。



「……麻奈…」




私の名前を呼ぶ低い声。




何度も何度も頭の中でリピートしてて、
何度も何度も忘れようと思った声。




「……蔵………」



最近は後ろ姿しか見てなくて、
目を合わすのも久しぶりで、
私に向けられた声を聞くのも久しぶりだった。


「……どないしたん…?」


その言葉を聞いた瞬間鼻の辺りがじーんとなる。
そして涙が目にたまった。


「……財前と……付き合っとるんやろ……?」


知ってたんだ。
いや、当然か…。

テニスコートに見に行ったりしたしな。

けど、
鮮明に思い出させるさっきの光景。




「……たった今…浮気されちゃったみたい………」

「え?」

「……女の子と…キスしてた……」

「…!、どうして……?」

「……わかんない……わかんないよ……。…………蔵……」



光はなんであの子とキスしてたのかな?
また私の何かが足りなかったのかな?

足りないとこだらけだな、私…
でも…



「今度は私が浮気相手でもいいっ。偽物の愛でいいっ。………だから……側にいて…………」

もう、どうなったっていい。
私の心は壊れてしまったみたいだ。





「……私に足りない分は補うから………、」



蔵に抱き着く。



「…私を愛して…っ…、」




どうなったって、いい。




「……麻奈…、」

「……蔵、好きだよ…。」











偽りの言葉でいい。
偽りの愛でいい。


だからその言葉と愛を私にください。



「………俺……も……、」



そして、静かに唇を重ねた。







こんなあたしにも
どうか偽りの愛を…




 

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -