14話

屋上のドアを開けると同時に授業開始のチャイムがなる。
ほんのり暖かい外の空気。
授業が始まったということでもちろん屋上には誰もいなかった。


が、しかし、ドアの向こうから足音が聞こえる。

誰か、と考える前にこの涙を人に見られたくないと思い、こぼれそうになった涙を拭った。
手摺りに寄り掛かるようにして空を見上げる。

ギィ、という音がしてドアが開く。



「おおっ!!びっくりした…、麻奈さぼりか?」

「あれ、麻奈?サボリはあかんで」






何を思い出してるんだろう。





声の主は謙也だった。
マネ辞めた以来全然会ってないからすごく久しぶりだ。



「…まあ…ね…」



隣まできて手摺りにもたれ掛かる謙也。
泣いてたのばれないかな、なんて思ってちょっと謙也のほうから顔を背けた。




「麻奈がサボるなんて珍しいな」

「謙也はいつもサボってるんだ?」

「うっ……」


明るい謙也に自然と頬が緩む。




「やっと笑った」

「え……?」

「さっきまでずっと笑っとらへんかったから…」



そんなつもりはまったくなかった。
けど思い返して見れば確かにそうだったかもしれない。


あなたがいなくても私は笑えた。
こうやって人は忘れてくんだ。




「新しく入ったマネの子…いい子?」




謙也は目を見開いた。
新しく入ったマネの子が蔵の好きな子だと私が知らないと思っていたのかな?



「…ええ子……やよ……」

「それならよかった。…だから私は負けちゃったんだね…」

「麻奈っ!!」

「いいんだ…。…もう私は笑っていられるらしいし。光もいる。……蔵には……その子がいる………」

「……っ…、もう…マネはやらないん…?」

「それは無理だよ。一回辞めたのにそんな自分勝手なことはできない」

「……また、コート見に来てな?」

「うん」





大丈夫。
私は強くなれる。


ずっと止まってるわけにはいかない。
今は過去になる。
だったら今をすばらしい過去にするために…




そう、思ったのに……

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