13話

蔵と同じクラスじゃないのは幸いだった。

だってあんな別れ方した後にどうやって顔を合わせたらいいのか、私には正直分からない。



「なんで麻奈と同じクラスじゃないんや!」

「去年までずっと一緒だったのが奇跡だったんだよ」


「麻奈は俺と一緒じゃなくて悲しくないん?」




「悲しかったよ……」


あの時は。
あの時はあの時であって、今ではない。
今は進み続けるけれど、あの時は永遠に止まったままなのだ。
だから美しい思い出として色あせることはない。
私の中では。





「大丈夫か?」
「…えっ?」



隣の席の男子に声をかけられる。


「…あ、うん。大丈夫けど…?」
「そうか?自分めっちゃ青い顔しとるで?」
「…そんなに青い顔してた…?」
「してたしてた。ほんまに大丈夫なん?保健室行くなら先生に言うとくで」
「…じゃあ………よろしく…」
「りょーかい」


いわゆるずる休みってやつ。
私は全然青い顔してるつもりなかったし、体調だって悪くない。
でも、なんか考えこんでしまってるから、授業なんかに集中できるわけない。
だってらお言葉に甘えて保健室にでも行かせてもらおうじゃないか。


けれど、私は保健室とは逆の方向へ歩きだす。
だって保健室には蔵がいるってわかってるから。


ほんとにずる休みになっちゃうな。
たまに授業中でも保健室にいることあるし、あの人。


会いたいけど、会いたくない。
私のことを気にして欲しいけど、気にして欲しくない。

この気持ちってなんだろう?

まだ、私はきっと蔵が好きなんだと思う。
だから蔵に見てもらいたって思う。


けどね、蔵にはもうあの子がいる、って理解してる自分がいるから会いたくない、気にして欲しくない、って思うんだと思うんだ。



屋上への階段を目指して、私は足を進めた。



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