12話
「おはようございます、麻奈先輩。」
「おはよう、光」
朝の光に目がくらんだ。 だけど目の前にいる彼の顔ははっきりと認識することが出来た。 今までとは違う距離でも大切な人だということに変わりはない。 「先輩俺のこと名前で呼んで下さいよ。付き合ってるんやし」
光は朝練があるけど、私が一緒に行きたいから、私も光と同じ時間に学校へ向かう。
ふと目線を反らすと女の子と仲良さそうに登校する蔵の姿。 恋人繋ぎをして笑顔を向けあう蔵達。 前は私に見せてくれたその顔。 やめて、そんな顔あの子に見せないで。 内心そんなこと思ってしまう。
「先輩」
ギュッと光が私の手を握った。 部長のことなんて考えなくていい。 続きにこう聞こえたような気がした。 苦しみが和らいで、安らぎが胸に宿る。
「…ありがとう」
そう言うと光は微笑んだ。
光を選んだ私は正直悪者なんじゃか、って思った。 少しでも蔵が嫉妬してくれるんじゃないか、って思ったこともある。
蔵のことを好きなまま、こんな中途半端な気持ちで光と付き合っててもいいのかな?
そう考えると少し胸がさっきと違うように痛んだ。 .
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