3話
「はい、財前君」 「ありがとうございます。めっちゃうまそうやん」
作ったマフィンを財前君に渡す。 途端、財前君は私の顔を覗き込むようにして見た。
「…先輩最近いつもと違う…」 「…!………そんなことないよ」 「そう……ならええんスわ」
そう言って財前君はマフィンを口に持っていった。
「ん、うまい」
そう言って笑ってくれる財前君を見て頬が緩んだ。
「多分もうすぐ別れるで」
部活中、突然耳にした貴方の声。
持っていたカゴを落としそうになった。
今まで本人からそうゆうのを聞いたことがないという安心感がどこかにあったのかもしれない。
「もしかして…別れてあの子と付き合うんか?」 「おん、めっちゃかわええやろ?」
その場から一歩も動けなかった。 多分、いや絶対私はこの場所にいてはいけない人間だったと思う。 けれど聞いてしまったのだ。 もう遅い。
今日は蔵と帰ろう。
そう決めた午後。
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