考えは止まる〜白石SIDE〜
急に止まる電車に前のめりになり浅い眠りから目覚める。
「もう着いたんか…。」
休日を使ってやって来た神奈川。
駅のホームにおりるといつか見た立海のメンバーが勢揃いしていた。
もちろん彼を除き。
「すまない、来てもらうことになり。」
「かまへんで。それより、王者立海が勢揃いして。」
「今から幸村の見舞いに行こうとしていたんだ。」
「…場違いやあらへん?」
「いや、そんなことはない。」
やはり、若干ピリピリしているように見える。
「とりあえず病院へ行こう。行く途中で大まかな事は話す…。」
その一言で俺達は動き出した。
*
「…なまえ先輩は元気ッスか?」
口を開いたのは、確か切原君という1年の子。
噂が関西まできたんやからすごいテニスをするんやろう。
「元気やと思うよ。…観察力がすごいなぁ、あの子は。」
「誰かと仲良かったりするんかのう?」
「さぁ、…みんなと話しとるけど、謙也とか小春とか……あ、財前がべったりやな。」
「へぇ、そうなのか。」
そう言った後、少しのメンバーがムッとしたのは気のせいではなかったと思う。
やっぱり、好かれとったんやな、みょうじさん。
会話が途切れたところでもう一度話を切り出す。
「…で、なんで……みょうじさんには言っちゃあかんのや?」
なんとなく予想はついてる。
けど――
「…幸村が、なまえだけには心配かけたくないと…」
幸村君か、
「みょうじさんの事嫌になったわけやないんやろ?」
「そんな事あるわけなか。」
仁王君が少し下を向きながら反論する。
「出来ることなら…、手放しとおなかった……。」
他のメンバーも同意するかの様に口を結んだ。
「…しかし、我々にはどうしようもできないことだ。今更どうこう言うつもりはない。」
真田君は言った。
みょうじさんも同じ気持ちなんやろか。
せやったら……
「この駅だ。」
柳君の一言で俺の考えは止まる。
電車を降り、駅から出ると、目の前に見えたのは大きな病院だった。
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『みょうじ』さんと呼ぶ俺と『なまえ』と呼ぶ彼等。
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