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笑みは殺人兵器


「忍足君ラストー。」
「浪速のスピードスターやっ!」
「おぉっ!」


忍足君があたしの前を横切るとものすごい風が吹いた。
それに靡く黄緑のジャージ。

それにしてもこの記録はすごい。

今はランニング中。
運動場を10周。

忍足君は1番後ろの子を4周遅れにし、走っていく。
1番後ろの子も決して遅いわけじゃないが忍足君のせいで遅くみえてしまう…。


「はい、お疲れ。水分補給したらコート入ってね。」


持っていたタオルを手渡す。


「浪速のスピードスターが1番にコートに入ったるでっ!」
「はいはい、」


次に入って来た白石君にも同じ言葉をかける。


「お疲れ、タオル持って水分補給したらコート入ってね。」
「おおきに。」


白石君が笑ったら軽く50人の女の子を落とせると思う。


「ん?どないした?」
「あ、なんにもないよ。」
「そうか、…じゃあ、コート入ってくるわ。」
「水分補給もね!」
「わかっとるって。」


たがら、その笑みは殺人兵器なんです。


「……なんか…部長となまえ先輩仲よさ気でうらやましい……」
「あ、財前君。お疲れ。水分補給したらコート入ってね。」
「え、俺の話はスルーッスか?」
「水分補給はちゃんとするんだよ?冬だからって暑いもんは暑いでしょ?」
「………むぅ…、」
「嘘々、明日に善哉でも食べに行こっか。奢るよ。」
「奢りはいいッスけど善哉は食べに行きたい。」
「ん、まぁ、早くいってらっしゃい。」


「先輩絶対ですからねっ!」
「うんうん。」



財前君から目を離し次の人へとタオルを渡していく。
冬にしては日差しが強い日だった。

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「善哉〜♪」
「ちょ、財前っ!顔を狙うなっ!」




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