accordance | ナノ

縛られる必要


「あ、おはよう。みょうじさん。」
「お、おはようっ…。」


朝、学校に来て1番に白石君に会った。
昨日の今日で何となく喋りづらいと言うのが本音。
あたしも少々でしゃばったマネしたんじゃないかと多少後悔していた。


「……あれから考えてみたんや。」
「……?」
「みょうじさんに言われた事。」
「あっ、……あぁ……、」
「勝ちにこだわりすぎてたみたいやな、俺。」
「…………。」
「始めの俺が目指しとったテニスっていうんは基本に忠実なテニスなんや。」
「……うん…。」
「基本を極めたいって思ったのは俺やから、縛られる必要なんて何にもあらへん。」
「……うん。」



「…っつても捉えかたが変わっただけで内容はあんまり変わっとらへん気もすんねんけどな。」


こんなにも無邪気に笑う白石君は初めて見た。
笑って細めた目はちゃんとあたしわ映してくれている。


「……よかった。」
「ん?」
「ちょっとでしゃばりすぎたんじゃないかって思って。」
「そんな事ない、めっちゃ勇気付けられた。」


"ピーンポーンパーンポーン、朝からオサムちゃんやでぇ。はい、今すぐテニス部全員部室集合。もちろんマネもやで。以上!ピーンポーンパーンポーン"


ハイテンションなのにどこかけだるそうな声が放送で響く。
いちいちチャイムを自分で言うところが四天ならではなのか。


「自分でチャイム言わんとってもええのに…。」
――そうでもないみたいだ。


「…部室って言ったよね?」
「おん。」
「行こっか。」
「せやな。」




部室前に行くともうみんなは集まっていた。
みんな顔がニヤニヤしている。
特に忍足君…





「ほら、届いたで。」


オサムちゃんこと、渡邊先生に紙袋を渡された。


「あぁ、あれか。結構早いんやな。」
「?あれ?」
「ま、とりあえず開けてみて下さい。」
「…う、うん。」


紙袋を開け中身を取り出すと、中には黄緑と黄色のジャージ――四天宝寺のジャージが入っていた。




「…これ……。」


「なまえちゃんのよっ。」
「俺ら、もう先輩の事仲間やと思っとるんで。」
「せやけど、小春に手出したらぶっ飛ばすからな!」
「それ着て頑張りっちゅう話や!」
「みょうじさんの仕事ぶりはようできてます。」
「これからも頼むで。」


みんなからの一言一言に涙が出てくる。
涙腺崩壊する。


「……ありがとうっ。」


ジャージをぎゅっと抱きしめる。


「やばい、先輩かわええ。」
「ちょ、財前危険。」
「なまえちゃーん。泣きたいときはあたしの胸で泣いてええんやでっ!」
「テニスボール入れるんか。」
「小春をけなすなっ!」


みんなの会話に頬が緩む。



「全国大会までサポートしてくれるんやろ?」


渡邊先生がこっちを見て意味深な笑いを浮かべた。


「もちろんです!」


立海のみんなとの約束のため、
そしてなによりこのメンバーで全国へ行きたいという思いがとてつもなく大きくなった11月。

----------
「早速来てみてや!」
「えっ((汗」






prev next
×