6話
「苺加ー。ドリンクくれー」
「うわっ!丸井先輩っ!びっくりしたじゃないですかぁ!!」
「ちょっと先輩、離れて下さいよっ!!麻原困ってんじゃないッスか」
苺加ちゃんと部員の仲は日に日に良くなっていった。
仕事もちゃんとしてくれる子が入ってみんな嬉しいんだろう。
「…仁王君はあんまり話さないね?どうしたの?」
「いや、そんなことなか。」
「ふーん…」
「なまえ、」
「あ、精市」
「今度の合宿の事、麻原に話してくれないか?今、手が離せないんだ。」
「ん、わかった」
私は苺加ちゃんがいるであろう部室に向かった。
みんな練習中だから二回目のドリンク作りでもしてくれてるのかな…?
「苺加ちゃん」
「…先輩。どうしたんですか?」
「あのね、今度合同合宿があるんだけどそれについての紙」
どうぞ、
と差し出すと苺加ちゃんは笑う。
いつもの笑いじゃない、
なんていうんだろう?
悪魔が微笑んだ、
とか、
そんな温いもんじゃない。
歪んだ顔と言っていいのか。
「先輩、そろそろ気付きませんか?」
「……何に?」
「ここにはあたしがいればいいんです。あの人があたしを好きになってくれればいいんです」
「…何言ってるの?」
「先輩なんて嫌いです」
「………え?」
「みんなから愛されて…、あの人からも………、」
「何言ってるの…?」
「一言で言うと、さようならってことです。」
そう言って苺加ちゃんは置いてあったドリンクを手に取る。
「…私にかけるの?」
「そんな馬鹿なことしませんよ。……こうするんです」
ジャバババ…
苺加ちゃんは自らドリンクを被った。
「ちょっ……何してるの?…タオルッ……」
タオルを取りに引き出しへ向かった。
その瞬間ドアが開く。
「はぁーっ!今日の練習も疲れる……って麻原……なんでそんな濡れてんだよ……?」
「苺加ちゃんドリ……――「先輩にドリンクかけられたんです…」……え?」
「あたしが合宿行くって行ったら……いい加減自分のうっとうしさ気付けよ……って……。」
レギュラー達が部室に入ってくる。
何言ってるの?
苺加ちゃん……?
私が何をした?
頬に痛みが走る。
「いくらうっとうしいと思ってもドリンクをかけることはないだろう」
真田君だ。
「真田君っ!あたしはかけてないっ!」
「じゃあなんで苺加は濡れてんだよ」
「…ブン太君………」
「先輩っ………、」
「……赤也君……」
「見損なったぜ…」
「……桑原君…」
「あなたがそんなことをする人だとは思ってませんでした」
「……柳生君……」
「行くぞ…、麻原にタオルを貸してやれ」
彼らは私に冷たい目線を送り部室からでていった。
柳君は何も言わずにみんなより数秒遅れて部室を出て行った。
あの、さようならっていうのはこうゆうことだったのか。
「…なまえ…」
顔を上げるとそこにいたのは、
「…精市……仁王君………」
二人の顔を見た瞬間、涙が流れ落ちる。
「私やってないっ……」
「うん、…なまえがそんなことする人じゃないって知ってる」
「信じとおよ」
「……っ、……あり…がと………」
「ごめんね、俺がなまえに頼まなければよかったんだ…。俺が渡しにいけば…」
精市の呟きなんて聞こえなかった。
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