もしも雨が止んだなら… | ナノ
42話

「手術は無事成功しました。傷が深く危ない状況でしたが、なんとか大丈夫でしたよ。…いつ目を覚ますかは断定できませんが…」

医者のその言葉を聞いた瞬間全身の力が抜けた。

「…よかった……」
「…あぁ」


命が助かったならまずは、それでよかった。

精市が目を覚まさないはずがない。
精市は強いから。
絶対に目を覚ます。

どこからか湧いてくる自信が私に安心感を与えた。
跡部さんは白石さんに電話するために場所を移動した。



窓越しに空を見上げる。
灰色の雲が広がって鋭い雨が降り続いていた。
止みそうにない雨は地面に鋭く突き刺さる。

「精市……」


手術室の扉が開き、運ばれてきた精市の顔は妙に青白かったが、どことなく微笑んでいる気がした。
精市の手を無意識に握る。


「目覚ますよね…精市だもん…」


大丈夫、大丈夫。
何度もこの手で助けてくれた。
この手の温もりを感じることができるから。



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