もしも雨が止んだなら… | ナノ
40話

手術中の赤いランプはともったまま。

傷が深かったのだろうか?

真っ赤なのか真っ黒なのかもわからないほど、たくさん流れ出ていた血。
どんどん光が消えていく瞳。
力が無くなっていく腕。
微かに微笑んでいた口元。

すべてが精市のものであって。

「…好き…だって………。」

そう紡ぎだす声も確かに精市のものだった。


精市は私に別れを告げたんじゃなかったの?
あの日の言葉がやけにリアルに思い出される。

わからない、
頭の中で整理できない。




「…幸村は、お前のためを思ったつもりで別れたんだ」

跡部さんが口を開いた。
この人は私の心でも見えているのだろうか?
驚きながら跡部さんの言葉に耳を傾ける。

私のことを思ったつもり?


「麻原は幸村が好きで、お前と幸村を別れさせかったんだよ」
「……そんなっ…」


「あたしは幸村先輩が好きなんです。」

「……っ……」
「幸村はお前を守るために別れた」



「………うっ……」
「辛かっただろ…」


その言葉を聞いたと同時に涙がこぼれ落ちる。
跡部さんが頭を撫でてくれた。


私のことを思ってくれてるなら傍にいてほしかった。
精市が傍にいてくれるだけで私は幸せなのに。


自分を責めないでほしかった。
精市は悪くないの。


そのすべてを伝えたい人は今近くにいそうで一番遠い。


「……雨が降ってきたな」


お願いだから、
伝えさせてください。

祈るような気持ちで目を閉じる。



そして、





赤いランプが消えた。


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