もしも雨が止んだなら… | ナノ
38話

切原SIDE

「…なにがあったんだ?」
「……切原…」




跡部さん達は俺に問い掛ける。
まあ、その場にいた人物は部長と麻原を除いたら俺しかいないから、しょうがないことなのかもしれない。

少し前の出来事が遠い昔のように思い出される。

麻原の首筋にあてられた刃物。
「…来ないでっ……!!」







「……麻原は……自殺しようとしてた…」
「自殺っ?」


俺は仁王先輩と別れた後、なまえ先輩の様子がおかしいのは麻原が関係していることを知った。
なまえ先輩に何があったのか幸村部長なら知ってるんじゃないか?
そして俺は先程まで捜していた麻原に加え幸村部長も捜し始めた。

妙に静まり返った廊下はすごく音が響く。
そんな廊下に静まり返った廊下でなければ聞こえなかったであろう音が聞こえた。
恐る恐るその音が聞こえた部屋の扉を開くと映る二つの影。

「……麻原………」


もう一つの影はさっきまで言わずもがな部長だった。

「…っ……来ないで!!」

ナイフを自分の首筋にあて今にも泣き出しそうな顔をしていた麻原。

「……あたしがいなければ……あたしがいなければなまえ先輩はっ!!」
「今更何言ってるんだい…?」


ゆっくりと麻原に近づく幸村部長。


「来ないでって言ってるじゃないっ!!あたしは死ぬのっ!!」
「今ここで君が死ぬなら、なまえには誰が謝罪するんだい?」
「…それはっ……」
「無責任すぎるよ」


幸村部長が近付くと後ずさる麻原。


「なまえなら許してくれる」
「…嘘よっ…!!」
「…幸村部長っ」


俺が名前を呼ぶのと鈍い音が聞こえたのはほぼ同時だった。


「そこからは…みんなの知ってるところに繋がる……」




……俺は何にもできなかった…………。




俺は
やっぱり
無力だ。




NEXT→39粒の雨

prev next
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -