もしも雨が止んだなら… | ナノ
30話

仁王SIDE

「……え?」

その場にいた全員が固まった。

「………幸村だぞ?」

手塚が再確認をとるようにもう一度問いかけた。
が、

「……ごめんなさい……、あたしその人のこと知らないです」
「……なまえ…」

なまえが幸村を知らない?
ありえない、そんなことあるはずがない。

「…なまえちゃんすまへんな。ちょっと席外すで」

白石はなまえにそう声をかけると俺達に目配せした。
ついて来いという意味だろう。
俺達はその部屋を後にした。








「幸村を知らねぇなんて……」
「………」
「なあ、仁王君。なんか知っとんのやろ?」
「…………」
「話せるとこまででええから俺らに話してくれへんか?力になりたいねん。」

白石はまっすぐ俺を見つめる。
嘘なんてついてない。


「…なまえと幸村は別れたんじゃ。」


「……なんだって?」
「幸村からふった。」
「…………それは俺のせいかもしれない…」
「どうゆうことじゃ?」
「……俺の話をしたんだ。………俺も過去に似たような事があってな……」
「なんだ。お前もか、手塚」
「……俺もあったで……、好きになった子が虐められてるのを見るのがどんなに辛いか……」

「……幸村もそれでふったんじゃ………、でもなまえは知らん。今までなまえの支えは幸村じゃった。
その幸村がいなくなったらなまえの支えはない。だから今回の様な事が起こった……」
「そのショックかもな…。その人の事を想いすぎてその人を忘れてしまう」
「…幸村だって別れて精神的に不安定なはずや。……今こんな事言うたら、幸村まで壊れてしまう…」

「麻原はどうなんだ。」
「どうってどうゆう事ぜよ……?」
「なまえを陥れた張本人だとしてもあんななまえを見て普通の人間なら何とも思わねぇはずない」
「……それもあるな……」
「…………麻原さん、幸村の事好きやったんやって…。別れなかったらなまえちゃんを虐めるって脅してたところをうちの部員が聞いてしもうてな…」
「……まずはなまえの記憶を取り戻す事が1番だな。他に何か忘れてる人、事がないかも調べる。」

「…まかせとき。」
「…わかった。」


跡部と手塚が去って行き白石とすれ違う時、確かに白石は言った。




「………自分はどっちを望んでるん?」





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