もしも雨が止んだなら… | ナノ
27話

幸村SIDE

仁王はなまえを抱えたまま歩き続ける。
向かう先はなまえの部屋だろうか?
話があると言った仁王はさっきから黙ったまま。



なまえはまた怪我をして、ついにはみんなの前で発作が起きてしまった。


二重人格。


そう呼ぶのが相応しいかもしれない。

なまえがテニスをやっていた頃、テニスが上手かったなまえは妬みから虐めにあった。
どんどん発展していきついには暴力。
なまえの中でもう一人の自分が出来た。
それがさっきのなまえだ。
もう一人の姿で虐めてきた相手をテニスでたたきのめしたらしい。
しかしなまえ一人の体に二人の人格が存在する。
そんな苦痛に堪えながら生活していた。

なまえはこの事をみんなに知られるのを恐れていた。
みんなが離れてくのが怖いって。
そんなんで離れるわけないじゃないか、って思ってたけど。
そうでもなかったみたいだ。

本当なら俺が1番に駆けていった。
1番になまえを助けたかった。

けど、
『なまえ』って名前を呼ぼうとしたとき戸惑ったんだ。


俺はもうなまえの彼氏じゃない。
俺からふったんだ。


でも、別れても虐めは止まないじゃないか…。



なまえの部屋に着き仁王はベットに なまえ を降ろした。
静かに眠る顔からはさっきの口調は想像出来ない。


「…幸村……お前、なまえを裏切ったんか………」
「…っ……、」


裏切る。
…裏切った覚えはない。
ただ、なまえを守りたくて、


「……違う……」
「違わないじゃろうっ」

仁王がこんなにも人のために怒りを表にするのは初めて見た。

「………俺は…ただ……なまえを守りたくて、…けど…好きな人一人守れなくて………」
「………っ!!」
「……俺になまえを好きって……なまえを最後まで守り通すって……言う資格はもうない…」
「幸村っ!!」
「…もとは俺のせいなんだ………、俺のせいで…」

そう思った先に飛んできたのは仁王の拳だった。

「……っ……」

口の中が切れて血の味が広がる。
仁王は俺の胸倉を掴み問い掛ける。


「…なぁ?なまえを裏切らないんじゃなかったのか?……なまえの事を好きじゃなかったのか?」
「……俺…は…………」

「お前だけじゃろ!!!なまえの発作を止められるのは!!!なまえがほんとに好きなのは!!!」


その瞬間、なにかがこみ上げてきた。


そうか、
仁王はずっと知ってたんだ。
仁王はなまえをずっと目で追ってたんだ。

なまえが好きだったから……



でも、

「…俺は……なまえが好きだ………。離したくない……。」


すると仁王は俺の胸倉を掴んでいた手を乱暴に離し、俺に背中を向けた。
「…だから、こうゆうのは嫌なんじゃ………。」
仁王の声はとても小さかった。





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