26話
切原SIDE
しばらくの間沈黙が続いた。
多分みんな考えてることは同じだと思う。
なまえ先輩がおかしかった。
いつもの口調じゃなかった。
テニス出来ないって言ってたのに、上手かった。
あのサーブだけでもわかる。
絶対テニスをやっていたんだ。
俺も時々自分を失ってテニスをすることがある。
周りの人はそんな俺を『悪魔化』という。
まさかなまえ先輩も………?
「…ったくなまえの奴、周りに迷惑かけおって」
真田副部長が口を開いた。
迷惑かけた?
「…ほんとだよぃ。なまえおかしかったよな」
「…まさかなまえさんがあのような方だったなんて……。」
「あんな事言う奴じゃなかったのに。もっと大人しいやつだったよな……」
お前ら、何なんだよ。
少し前まではこんなことを言い合う人たちじゃなかった。
しかもなまえ先輩に、だ。
「ん?どうした赤也?」
「ふざけんじゃねーよ…。なまえ先輩が何をしたっていうんだよ。……何の証拠もねぇじゃねーか!!」
「…赤也君……赤目……、」
麻原が怯えたような声で俺に言う。
「…黙れよ」
「……っ……」
「…赤也っ、そんなこと言うなよ!じゃあ、逆になまえがやってない証拠でも「…それだよ」……え?」
「…なまえ、なまえって………先輩らなまえ先輩の事も信じられないのに……いつまでも名前で呼んでんじゃねーよっ!!……いつまで先輩を苦しめるんッスか……」
「…それはっ………、」
「…先輩ら……今だにリストバンド持ってるじゃないッスか……」
「…………っ……、」
「…いつまでも……先輩に期待させるような事するから……なまえ先輩はそれでどれだけ傷ついたか………なまえ先輩はあんたらの名前なんてもう呼ばないよ…」
俺はそれだけ言うと走った。
ただ、ただ、悔しくて。
何も出来ない自分が悔しくて。
腹がたって。
「……っ…」
溢れる涙が止まらなかった。
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