もしも雨が止んだなら… | ナノ
25話

財前SIDE

「今日も暑いなぁ」
「……そうッスね」

最近チームメートが信じられなくなった。
合宿中、口を開けばみょうじさんの悪口ばかり。
それを止められない自分にも苛立つ。

「…あの女が来たばい」

その瞬間、
青学、立海そして四天宝寺の人の目がみょうじさんを向く。

ゆっくり歩きながらコート際を歩くみょうじさん。
その様子に違和感を覚えたのは俺だけじゃなかったみたいだ。

「……なまえ?」

遠くから仁王さんの声が聞こえた気がした。


ヒュッ


いくつかのボールが空に上がる。
放たれたボールはまっすぐみょうじさんの体に当たった。
が、みょうじさんはよろめきもせず回りを見渡す。

そんな姿を見て間もなく誰かがサーブを打とうと、もう一度宙にボールを飛ばした。
この人らも何回あの人を傷つければ気がすむんや。


「…みょうじさっ…――――」

パコーン

俺が叫ぶのとテニスボールが打ち返されるのはほぼ同時だった。


「………え…?」


周りの人は何が起こったのかわからない顔でそれを見ている。
みょうじさんの右手にはラケットが握られていた。
あのラケットはベンチにたてかけてあったラケット。
先輩らが面白半分で倉庫の中から引っ張りだしてきたやつで手入れも効いてない。

みょうじさんはそのラケットを綺麗に回す。


「お前らみたいなザコの球、返せないほうがおかしいよ」

みょうじさんは嘲笑った。


俺の知るみょうじさんじゃない。
確かに初めて会ったときからそんなに時間はたってないかもしれない。

けど…………

「…どうゆう事だよぃ……。ザコって……」

丸井さんが言葉を発する。
立海メンバーも始めて見たのだろうか?
瞬間、さっき自分にあたったボールを拾い上げ、そのボールを打って丸井さんのラケットを弾いた。

「……っ……、」
「…今の言葉に間違いがあったかよ?ないだろ?お前らザコなんだからよ。
テニスもろくに出来ないくせに一人の女守ったつもりになってんじゃねーよ!!」


その場にいた全員が凍りつく。
マネージャーの麻原も例外じゃない。


「…それとこれとは別だろう。お前が麻原を虐めたり、仕事を押し付けているのには変わりはない」
「押し付けた覚えはねーよ」

みょうじさんは真田さんに言う。
確かにそうだ。





証拠なんてない。






「……うっ…………ぐっ…」


途端、みょうじさんはうめき声をあげて、その場に倒れた。



「……っ……」
「なまえっ!!」


1番にみょうじさんの元に駆け付けた仁王さん。


「幸村っ!!」

仁王さんが叫び幸村さんを呼ぶ。

「ちょっと話がある…」


仁王さんは倒れたみょうじさんを抱え幸村さんと室内へ向かった。
残された俺達は何をしていいのかわからない。

「一旦各校でわかれるで」

部長が声をかけた。

「誰か一人くらいおるやろ」


その意味はわかる人にはわかったようだで、青学、氷帝の部長はひとつ頷き部員を連れていった。
たった数分の出来事がとてつもなく長く感じた。


財前SIDE・END


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