もしも雨が止んだなら… | ナノ
24話

しばらくし、涙の痕も消え私は廊下を歩く。
もうなんのために歩いてるのかもわからない。
ただ進むだけという簡単な結論のためだっけ?

「なまえ先輩」

赤也君の声がした。
その声でぐっと現実に戻される。

「…どうかした?」
「今からコート行くからなまえ先輩も誘おうと思ったんスけど………なんかありましたか?」
「…ううん、何にもないよ。行こうか」
「…はいっ!!」

帽子を被り外に出る。

「今日も暑いッスね」
「……そうだね」
「……先輩、長袖暑くないんスか?」
「うん、大丈夫だよ。」
「そうッスか。…じゃあ行ってきます!!応援よろしくお願いしますよ!!」
「うん」

作り笑いで赤也君を見送る。
作り笑いさえも出来てるか分からない。





「…見事な作り笑いじゃのう。」

急に聞こえた声に驚いた。

「…仁王君、脅かさないで」
「お前さんは嘘をつくのが下手くそじゃ。そんなんじゃペテン師にはなれんぜよ」
「………別にもう――」
「あと、」

私の言葉を遮り、何かを思い出したように仁王君は付け足す。


「…お前さん最近『ごめん』しか言うとらん」
「………え…」
「言ってみんしゃい。『ありがとう』って」

そう行って仁王君は歩きだす。
仁王君はこの後私が言う言葉なんて簡単に想像できたんだろう。



ありがとう、



確かに最近言っていない気がする。
懐かしい響き。


「……ありがとう……か……」





ドクンっ





「……っ!!!」






頭が割れるように痛い。
息が上手く出来ない。


「…ぐっ……ハァ……ハァ………っ……、」








「…別れ……ようか………」








なんで今思い出すんだろう…
「…っ………ハァ……ハァ……ハァ……………、」





久しぶりだ。
こんなに苦しい発作。
あの時以来。


空は明るい。


「……ハァ……ハァ……ハァ………フフッ、」




私は眠りにつく。



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