14話
多目的ルームに全校のレギュラーが集まった。
前回の合宿で面識のある氷帝のみんなは笑顔を向けてくれたり、手をふってくれたりしたけれど、私はなかなかうまく返せなかった。
前までは当たり前だったことが今では珍しく感じる。
「よし、全校そろったみたいだな。他校の事はだいたいみんな把握できてるだろ?
マネージャーだけ自己紹介しとけ」
跡部君が声をかける。
「え、挨拶するんですか?」
「大丈夫だ、いつもの麻原のままいけばいい。」
今、私には向けてくれない真田の優しい声。
苺加ちゃんが前に立つ。
「立海2年の麻原苺加です。まだ、マネージャーに成り立てですが皆さんのことサポートできるように頑張ります。」
「よっし!自己紹介終わりっと!」
わざとらしい丸井君の声。
私はもういない設定。
空気同様。
「おい、おい。まだおるやろ。ちゃんと挨拶させてやらな、可哀相や」
忍足君………。
「なまえ、挨拶しろ。」
跡部君のほうを見ると微笑んでいる。
「行っておいで」
精市が私の背中を押す。
「……みょうじなまえです。よろしくお願いします。」
頭を下げる。
そんな人達がいる中、顔を上げたら見えるのは立海レギュラーの冷たい顔だろう。
このまま時が止まればいいのに。
顔を上げるのが怖い。
「なまえちゃん久しぶりだC〜!」
顔を上げる前に芥川君が飛びついてきた。
「あ、芥川君!」
芥川君はいつもにこにこしてて、
その笑顔にあたしの中の黒い何かが一瞬にして消えた。
が、
この人達もいずれあたしを嫌うんじゃないか………?
もう、この笑顔を見せてくれなくなるんじゃないか?
ドクン
やばい、
こんなときに限って起きなくてもいいのに………。
「…………うっ……」
「なまえ先輩っ!」
赤也君の声が響く。
朦朧とする意識の中最後に見えたのは苺加ちゃんの驚いた顔だった。
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